epilogue.

 氷室冬華は奇妙な夢を見た。

泡沫を記せバブルス・メモリー。」

 そう唱えると、自分の記憶が泡になって本の中に吸い込まれていく。そんな夢。

 そして目を覚ますと、枕元には夢で見た通りの本が置かれていた。

 その本を開くと、よく見知った二人が幸せそうに寄り添う姿が、脳裏に映し出された。

「そっか。アイツは史紀先生とくっついたか。……可愛いヤツだったな。……ま、お幸せに、っと。」

 ……これは、無暗に覗き見るもんでもないな。

 氷室は詠唱する。

凍て閉じよアイス・シール

 すると本は、まるで氷の鎧を纏ったかのように固く凍り付いた。

 能力の名は、『凍てつく守護者』。

 よりによってこんな異能力を持った私のもとに、こんな本ともう一つの異能力が回ってくるなんて。

 ……しかも、こんなお熱いカップルが封印されて。

 こうなれば選ぶ道は一つだ。……まあ、こうしろと言われているのだろう。

 


 とある休日。

 氷室は湖へ出かけた。

 湖にかかる橋から氷室は湖へ、凍てついた本を投げ捨てた。

「ここまで邪魔しに来るヤツはよっぽどいないだろう。……さよなら。お幸せに。……史紀先生と各務さん。」


 固く凍てついた本は、穏やかな水面に、静かに沈んでいった。

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