あの頃僕を支えてくれた君は

へこあゆ

僕の初恋の相手

実家の僕の部屋の窓は、隣の家の君の窓と繋がっていた。


僕たちはどちらもお互いの両親と仲が悪かった。

両親と喧嘩をするたび、自室に戻り窓を開けるのだ。

そうすると君も僕と同じ泣きじゃくった顔で、窓を開けてくれる。

お互い会話することはなかったが、お互いの顔を見せ合うことで安心していたのだ。


そうやって君と喋ることはなかったが、お互いの境遇に惹かれ、学生時代を共に過ごしてきた。

そして僕はいつしか君の大人びた姿に好意を持つようになった。


ある時から、君は窓を開けてくれなくなってしまった。

僕の両親は相変わらず僕のことを殴り、恐喝をしてくる。

僕は家族関係の修復を諦めるようになっていた。

今はただ君と顔を合わせるだけで生きていける。

そう思うようになっていた。


両親に不快な感情を抱く度に、

僕は窓を開けて君を待っていた。

しかし君から窓を開けることはなくなっていた。


君と同じ街に住んでいると噂はすぐに回ってくる。

僕のことを嫌いな親が言う。

「お前が窓から見てる隣の子、取っ替え引っ替え悪い男とホテルに行き、やらしいことしてるんだって」


僕の心は海に溺れてしまった。


ある時、僕の窓を風が強い音で叩いてきた。

びっくりしたので窓を開けたら、君のやらしい声が聞こえてきた。


僕は失恋したと共に、初めての女性のやらしい声に興奮してしまった。

僕はその声で自慰行為をし、そのまま果ててしまった。


その後僕は都会の大学に進学し、君と顔を合わせることはなくなった。


僕は今恋人がいる。君が窓の向こうでしていたようなことを違う女の子としている。

しかし、その子との行為の中で、あの日のことを思い出しながら毎回果てている。


強風が僕を突き刺す時は必ず、君の幼い時の泣きじゃくった顔、急に大人びた風貌、あの日の恥ずかしい声、全てを思い出し、僕は一生を終えることとなるだろう。

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あの頃僕を支えてくれた君は へこあゆ @hekoF91

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