白戸

第1話

火葬場から持って来たひとかけらの骨。


火葬場には行けない、遺族ではないから。

だから、あの人の骨を少しでいいからくれない?


なんてあの子が仄暗い顔で言うから。

私はつい手が伸びてしまった。

こんな、もう人でもない白い燃えカスを何故欲するのか私には分からない。


私はこっそり持ち出した小さな燃えカスをポケットから取り出して眺めながらそんなことを考えていた。


あの子に頼まれてたもの取ってあるから、いつでも取りに来くるように伝えた。


連絡して翌日あの子が取りに来た。


泣きながらありがとうと言われた。

メイクがボロボロになるのも構わず泣きじゃくっていた。


あの子にとって白い骨はそれほど大事なものなのか。


いいな。

私もあの骨のように燃えカスになればあの子に欲してもらえるのかな。





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白戸 @kazenoshirabe

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