第59話:家臣

 俺は先に領都に戻っていたが砦の修理や、やつらが反撃に来ないか警戒していたクルトやヴェルナーが率いる軍が帰還した。

 兵士たちは兵舎に戻し、まず休息を取らせることにした。


 労いの言葉をかけるためにクルトを呼び出す。

 ヴェルナー? あいつは速攻寝たらしい。


 城の外でクルトを待ちわびていると、包帯をほとんど取り払ったクルトが現れ、俺の前で跪く。

 あの重傷から、ここまで回復するなんてオーラまじですごいな……。


「おつかれ。クルト」

「ただいま帰還致しました主君」

「ご苦労だった。まぁクルトも疲れていることだろうし休むといい」


 俺がそう提案すると、クルトは首を横に振る。


「いえ。大丈夫です主君のお側に」


 なんか……ちょっとヤンデレみを感じるんですが。大丈夫だよね? これ

 俺は拒否したクルトに命令だと念を押し、無理やり休ませた。



 空は黒に染まるが、練兵場では賑やかさに満ち溢れていた。

 砦でも軽く宴を行ったが、料理は質素だったし改めて戦勝のパーティーを行った。

 俺はそんな彼らを眺めながら、グラスを揺らしワインを回す。

 ……ちなみに雰囲気が出るからやってみたが、何の意味があるのかは俺も知りません。


 そんな中、俺に一人の人物が近づいてくる。


「アイン様……」

「ヴェルナーか。宴に行かなくてもいいのか?」


 俺がそう問いかけると、ヴェルナーは首を横に振る。

 あのヴェルナーが大人しいなんて珍しいな。


「アイン様。俺はどうすればいいんすか……?」


 なんとなくヴェルナーの考えが伝わってくる。

 家臣団の中では、ヘルベルトに次ぐ剣の使い手だったがクルトに敗北したことで地位を奪われたような気分なのだろうか。

 砦防衛戦でも、間に合いはしたが窮地を救ったのは兄上だ。

 まだ俺らは若い。この年頃なら自分の存在意義に悩むのもよくあることだろう。まぁ俺は前世含めたらそれなりの年齢なんですけどね……。


 まぁヴェルナーの悩みはわかるが、俺にしてやれることは……。


「お前はお前の道を征け。ヴェルナーが自分で見つけるんだ」


 ヴェルナーを拾ったのは俺だがら厳密に言えば俺に面倒を見る責任があるのかもしれない。

 だが、俺は奴隷が欲しくてヴェルナーに手を差し伸べたわけではない。

 仲間が欲しかったのだ。


「俺の道……すか」


 ヴェルナーには難しい課題なのかもしれない。

 だけど、なんだかんだ言って俺は信じてるんだ。どんだけ矯正しようとしても直さなかったその口調に。

 芯が一本通っている男だと思っている。自分の道を見つけれるはずだ。


「道に迷ったときは、思い出すといい。お前は俺のの騎士だ。自信を持て」


 ヘルベルトも、今でこそ俺の騎士だが元々は伯爵家に仕える騎士だし。

 筆頭騎士はヘルベルトでも俺のの騎士はヴェルナーであることは絶対変わらない事実だ。


「……ありがとうございますアイン様」


 悩んでいたようだが、少しだけ自身を取り戻したようだ。


「あんまり深く考えるなよ。ヴェルナーはバカっぽいほうがちょうどいい」

「酷くないすか!?」


 そうだな。やっぱりヴェルナーには、そのらい明るい方が似合う。

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