第45話:砦防衛戦Ⅰ
「攻撃を開始せよ」
俺の号令と共に、投石や弓を射かける。
農民兵が柵に取り付き、柵を壊そうとするが、バタバタと倒れていく。
だが、それでも柵は少しづつ破壊され突破されていく。
あちこちに設けた堀には死体が溢れ、くぼみが埋まっていく。
思っていたより、敵の農民兵の動きが緩慢だな…。
だが、それでもすこしはまず農民兵を前面に押し出し、柵の撤去を行おうとする。
魔法使いは温存する方向なのかな。
「エーリッヒ頼む」
エーリッヒは、こくりと頷くと小さな火の玉を前線の柵の手前に置かれた木箱へと着弾する。
着弾した瞬間、けたたましい音と衝撃波が辺り一帯を突き抜ける。爆心地にいた者たちは目も当てられない様になっているが、少し離れた距離にいたものたちも蹲っている。
前回残党を掃討した時の経験を元に、火薬に鉄片を混ぜ込み手りゅう弾のように改良した。
今の惨劇で無事だった者たちも躊躇するような素振りが見られる。
お? 一部の農民兵が逃げ出そうとしている。
だが、彼らの逃げる先には一人の騎士が立ちはだかっていた。
騎士は逃げようとする農民兵を真正面から切り伏せた。
「逃げようとする者は即刻叩っ斬る!」
まじかよ…。いや、でもこの世界ではこれが普通なのだ。
騎士は農民兵を指揮する立場だが、同時に農民兵を監視し脱走を防ぐ役目を負う。
まぁだからこそ大体、騎士が指揮できる人数は200人程度が普通で最大でも500人が限界となっている。
前面には柵と弓と投石に怯え、後ろには騎士が監視している。農民兵の彼らには少しばかりの同情はするが、手心を加えることはできない。
爆心地は柵もろとも吹き飛んでおり、その穴から続々と敵の農民兵が、雪崩れ込んでくる。
こっちは火薬なども使ったが、敵は魔法を使う素振りが見られない。
柵もすべて農民兵で撤去するつもりなのか…?あまりに豪華というか、無為に使い潰しているな。
魔法を温存するつもりなのか。臆病ゆえに使いあぐねているのか?
そんなことを考えている間もやつらの柵の撤去は少しずつではあるが、進んでいる。すでに城壁の外には地獄絵図ともいうべき光景が繰り広げられる。
堀には死体の山が積もり、柵を枕に倒れ伏す者。痛みで絶叫するものなど。
だが、俺は目を背けない。
それが、戦うことを決めた者として覚悟であり、責任だ。
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