小さい村で作業用に使ってた人型兵器はオーパーツ〜すいません、それ扱えるの俺だけなんです〜
土斧
第0話 とある村で作業用に使われているロボット
「おうい、マガミィ。ちゃっちゃと動けよ。」
「十分ちゃっちゃと動いてますって。」
小さな村の一角、とある倉庫のの外側。荷物運び用のドローンに荷物を次々と入れる10m代の人型ロボットの影があった。
そのロボットの総称はヒューマン・フレーム。略称はHF……これ以上ないほどに分かりやすいだろう。
人型のフレームを持って生産され活動するロボットだからHF、実に分かりやすい。ともすれば安直な名だ。
その街倉庫で荷物入れに準じているそのHFは、つや消しの白を全身の基調にしながら、差し色で赤色を混ぜこみ、頭部は特徴的な嘴状のバイザーを持っている機体だった。
その機体は慣れた手つきで次々と荷物はドローンへと詰め込んで見送る。
普通人の手に掛かるのならば今かけている時間の何倍もかかるだろうに、このロボット……HFの御蔭で作業効率はバク上がりだ。
山のように積まれていた荷物も、あっという間に空となりその全てが村の倉庫に収められている。
すると、ヘルメットを被った現場監督らしい男が、そのHFを見上げて声上げる。
「おいマガミ、荷物入れはこれで終わりだ!後はこっちでやっとくからお前は上がれ〜」
「あ〜い。」
そう言って、その嘴バイザーのHFに乗り込む少年は声を上げる。すると、胴体にあるハッチが開いて、そこから一人の少年か現れる。
逆だった黒髪に赤い目を特徴とした少年だ。名前は、マガミ・ウォーレス……この小さな村、クラフ村に住む一般の少年だ。
マガミはなれた手つきでコクピットからワイヤーを下ろしてそのHFから降りると、現場監督の元へと駆け寄る。
「今日は終わりか?」
「おう、ほれ。給料。」
「あんがと!」
マガミは給料を受けとると、一礼してさっさとその白いHFへと駆け寄る。相変わらず現金な奴だと現場監督の男は肩を窄める。その間にも、マガミはそのHFに乗り込んでしまっているではないさ。
すると、そのHFは膝立ちの状態から立ち上がり、この村特有の無駄に広い道をゆっくりと歩いて去っていくのだった。
その後ろ姿を見た現場監督の男は、頭を軽く掻きながら呟く。
「親父さんが死んだ時はどうなるかと思ったが……案外大丈夫そうだな。マガミの奴。」
そんな言葉が呟かれたのもつゆ知らず、マガミはその白いHFを操縦して仕事場から自身の家へと戻る。
すると、その途中で農家らしきおばあちゃんに声をかけられる。
「マガミや。」
「?ハゼのばあちゃん。どうしたんだ?」
マガミは丁寧にもそのHFを跪かせ、コクピットから顔を出して声を掛ける。すると、おばあちゃんは申し訳無さそうに声をかけてくる。
「悪いんだけど、ちょっと手を貸してもらえないかねぇ?」
「いいよ!任せとけって!」
そう言ってマガミは、自身の白いHFのコクピットに向かって一声かける。
「ヴィーク。家に帰るのはもう少し後だ。」
そう言って、マガミは再びその白いHF――ヴィークから降りると、いつも世話になっている農家のハゼの元へと向かうのだった。
▲▼▲
今、世界は荒廃の一途をたどっている。
この地球には、謎の金属生命体、名をそのまま金属生命体(Metal Life Form)これを略してMLF――メルフと呼称される生命体が地上空中海上問わず跋扈している。
液体金属が無理矢理その形を作ったような形状をしているその生命体は、あらゆる物質を喰らい己の糧として自己増殖に自己強化、自己回復を図る。
なぜだか人を襲うそのメルフ達は、瞬く間に人類を蹂躙し大きく荒廃させた。しかし、人類もただ指を咥えて待っていたわけではない。
人類はメルフを研究に研究を重ねて、あらゆる物質を吸収するメルフに対抗する粒子――反射粒子を開発した。
この粒子はメルフに特効性を持ち、メルフの吸収能力を破ってダメージを与えることができる代物だ。
これを利用した対メルフ用の兵器こそ、先にマガミが乗っていたヒューマン・フレームことHFなのだ。
しかし、その反射粒子を持ってしてもメルフの圧倒的な再生、増殖、強化能力の前には、拮抗するのが精一杯とされている。
事実、反射粒子の登場からこと200年は過ぎているのに、未だにメルフの脅威と人が隣り合わせなのがその証拠だ。
人類は、圧倒的有利に立てる反射粒子やHFを有しても尚メルフとの生存競争に決め手を打てないままでいた。それはまたメルフ側も然り。
切り札と成り得るのは……オーパーツと言われる過去の遺物。特に、半永久的に反射粒子を展開できる幻の十二機のHF……それを、各国は血眼になって探っていた。
何処かの国がそれを探し当てられれば、対メルフにおいて究極の一手を指す事が出来るからだ。
……その内の一つであるHF。特徴は、つや消しの白い体に、嘴の様に伸びるバイザー。
とある小さな村で、やれ荷物運びや農業等、こぞって作業用に駆り出されるHF……つけられた名は、嘴であると言う所からそのままヴィーク。
そんな機体が、小さな村で作業用に駆り出されような機体が、人類逆転の一手を担うオーパーツだとは、だれも想像していなかったと言う。
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