日記

メンタル弱男

7月19日



 7月19日


 一時間前、妙なことが起こった。


 僕の目の前で、人が消えたように見えた。はっきりとはわからない。まるでつまらない映画でも見ているかのように、ぼうっと前を眺めていると、ふと誰かが消えた。

 今日は部活が終わって、塾で勉強して、別の高校の生徒らと帰っていたはず……だけど、あまりはっきりとは思い出せない。誰が消えたのか、なぜ消えたのか、何もわからない。ただ暗い霧の中へ身を隠すように、音も立てず消えた。消えたように見えた。


 少しだけ寒気がする。とても夏の夜とは思えない。薄いタオルケットを二枚広げて身を包む。エアコンを切って窓を開けると、けたたましい歪んだ音が鳴っている。蝉がこんな時間まで叫んでいることに、とても腹が立った。生温かい風が身体にまとわりつく。それなのに、やはり寒い気がした。左手で鳥肌をさすりながら、とりあえず机に向かって、文字を書く。


 ところで、なぜ人が消えたのに、僕はここで呑気に日記を書いているのだろう?

 警察? それとも塾? どこかに連絡したほうがいいのかもしれない。そう思うものの結局僕はペンを離さない。椅子から立ち上がることもない。


 そして結局、誰が消えたのかわからない。

 

 気のせいだった、と言い聞かせる。鮮明な記憶がなければ、いつだって忘れることができる。都合のいいように。


 

 

 

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