深夜の魔法少女【仮】

草間保浩

第1話

 眩しい日差し、四月の風、今日から始まる新学期。

行き交う生徒たちの顔には笑顔が溢れ、輝く未来を楽しみにしている。

 

 彼女らが向かう丘の上にある超巨大女子校『真寺花縷まじかる学園』には、七不思議の噂がある。


 壱、『契約精霊』と呼ばれる魔物と契約したものは『魔法少女』となる。

 弍、学校には夜中になると『怪人』が出現する。

 参、『魔法少女』になれるのは中等部の女の子だけ。

 肆、『魔法少女』になると〜〜


 ここまでしか無い中途半端な七不思議だが、その全部が『魔法少女』という謎の存在に関するもの。

 だから、この『魔法少女七不思議』と『表の七不思議』は別だったりする。


「ねぇ、あれって高等部の人なんじゃないの?」

「え、でも制服は中等部だし、リボンは2年生の赤だよ。」

「わ、ホントだ。え、ヤバくない?中学生アスリートなのかな。」


 『真寺花縷学園』は校舎の広さから高等部、中等部、小等部の登校はほぼ確実に別になる。

 そのため、小等部上がりの生徒も中等部の生徒を見るのは初めてと言う場合が多い。


 そして、そんな彼女らの注目の的となっているのは、一人の少女。


 13歳という若さで身長が180センチに迫る超長身。故に周りの女子の群から頭が飛び出ている。

 その頭部には桜並木よりも濃いピンクの頭髪が後頭部で一つに結われているし、前髪から覗く瞳は宝石の様な桃色だった。


 スカートから覗く太ももや、サイズ感の合わない制服にはち切れんばかりの筋肉の凹凸。

 全身から武人のような威圧感を溢れさせ、肩で空を切るその少女に、周りの女子たちは興味半分恐怖半分と言った感じ。


「ねぇ、話しかけてきてよ。」

「えー、怖くない?それになんて言って話しかけるの?」

「ちょっと挨拶するだけだって。」


 後輩たちのいたずら心が行動に移る直前、話題の少女が突然振り向き、話をしていた少女たちの方に顔を向ける。


 その様相は般若の如く、振り返りから走り出しまでの時間は1秒もなかった。


「ひぃっ!?」


 吹き抜ける風、直後響くブレーキ音。

周囲が騒然とする中、道路を横断していた少女は、手の中の子猫を見つめて微笑んでいた。


少女の名前は八月朔日ほずみゆたか



この物語の主人公である。

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