決意した夜に。
崔 梨遙(再)
1話完結:700字
その日、僕はとうとう離婚を決意した。結婚して半月で、嫁の借金の督促状が来た。僕が払った。翌月、別の会社から借金の督促状が来た。僕が払った。そして、違う会社の督促状は翌月も……更に翌月も……。いったいどれだけの借金があるのだろう? 嫁自身も借金の総額はわからないと言っていた。どういうことやねん?
お金の話だけなら良かった。僕は借金を払わされた上に浮気をされたのだ。もう許せない。僕は離婚を決意した。
「明日、朝一番に実家に帰れよ。僕はちょっとコンビニに行ってくる。言うとくけど、絶対に離婚やからな。その結論は変わらへんからな」
コンビニから戻ると、嫁はいなかった。気にもしなかった。浮気も4回目だったから、顔を見るだけでも気分が悪い。反吐が出るという言葉の意味を知った。嫁はどうせ実家にでも帰ったのだろう。僕はベッドの上に横になった。腹が立っているので眠気は無い。ただ、何をするにもだるいだけだ。
そうだ、だるい。離婚はエネルギーを吸い取られる。会社に行くのもカッコ悪い。僕は憂鬱になった。そこで、顎に手をやって気付いた。ちょっと髭が伸びている。離婚の瀬戸際で髭を剃るというのも呑気なのかな? とは思ったが、他にすることもない。僕は鏡台の前に座って髭を剃り始めた。
鏡に、背後が映っている。押し入れだ。押し入れの襖がスーッと開く。そして、ゆっくりと嫁が這い出て立ち上がり、近寄って来る姿が映る。そして嫁の手には、包丁が握られていた。後ろを振り向くのが怖い。
決意した夜に。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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