第25話 ねぇ〜山田くんはさ……今、その、好きな人とかいるの?

 そして、俺たちは月野さんの部屋に案内された。


「わぁ! なんか! すごい可愛いね! 雫の部屋!」


 そう彼女が興奮して、月野さんに言う。


「そう、そうかな……えへへ」


 彼女は中川さんに褒められて照れを隠しつつ、そう笑った。


「さて、まだ田中くんが来てないけど……先に勉強会始めますか!」


 そう、月野さんが提案する。


「そうだね……じゃ、始めよう……」


 そう俺たちが始めようとした時、ちょうど月野さんの家のチャイムが音を鳴らした。


「あ! 田中くんじゃない? 私ちょっと行ってくるよ!!」


 そうして、彼女は下に降りて正孝のお出迎えに行った。


 こうして……今、月野さんの部屋には俺と中川さんの二人だけになった。


「ねぇ、山田くん……何だか私、この世界で山田くん以外のお家、初めて来たからなんだかとても新鮮な気分だよ!!」


 そう彼女はニコリ! そう笑ってそう言った。


「それはよかった……中川さん……今日勉強、一緒に頑張ろうね!」


「うん!! 頑張ろう!! へへ」


 そう彼女と会話をしている時、ちょうど正孝と月野さんが一緒に上がってこの部屋にやって来た。


「よう! 久しいな! 海人!」


「いやいや、昨日会ったばっかじゃないか、何言ってんだ、お前?」


「あはは笑、一足先の夏休み気分ってやつさ!」


 は? 正孝さんあなた、何言ってんの?


「中川さんも……こんにちは……」


 そう正孝が中川さんにも挨拶をした。


「うん! こんにちは! 田中くん! 今日はよろしくね!!」


「……はぃ」


「お前、何、緊張してんだ?」


 そう俺が正孝に言うと、正孝は俺の肩をぎっしり掴んで耳もとでなにかを言って来た。


「……だってよ、女の子の家なんて、ほんと何年振りだからよ! なんか、緊張しちまって」


「へぇ〜意外だな……お前昔、とても仲の良い女の子の幼馴染がいてよくその子の家遊びに行ってたって言ってたじゃないか……」


「それは、もう、何年経ってると思ってるんだ! あれはもう、流石に時効だ!」


「そうなのか?」


「ああ、そうだ」


 そう俺たちがすっかり話に夢中になってると、俺たちの後ろから月野さんが話しかけて来た。


「なになに、ひそひそ話? 気になるな〜」


「えっ? 月野さん……」


「何の話してたの?」


「いや……その」


 俺たちは、月野さんに聞かれて動揺した。

 すると、正孝が月野さんに


「あ! そういえば、月野さん! 海人のやつが月野さんってやっぱり可愛いよな! って言ってたぞ!」


「……は? おい、お前……何言って……」


 正孝のやつが急に月野さんに俺が可愛いって言ってたとか、ありもしない事実を言いやがった。

 いや……実際、彼女は可愛いのだが……


「え? やだな、山田くん可愛いなんて〜もう」


 彼女は体をフリフリしながら恥ずかしそうにそう言った。


 彼女を見ていると……正孝に横からトントンと、肩を叩かれてこっちに向かってグッチョブをして来た。


 なにがグッチョブだ、正孝は後でお前は、しばくからな……


「さーて! 勉強しようか! みんな〜」


 俺たちは月野さんの部屋にある、テーブルに勉強道具を広げる。

 そしてわからないそれぞれ問題を教え始めた。


「まじ! 鈴音! この問題わかるの? すご!」


 そう、月野さんが中川さんを褒める。

 なんだか、中川さんはとても褒められて嬉しそうだった。



 ーーそして、勉強会は、続々と進んでいき、結構時間がたった頃……


「ねぇ、雫……ちょっと、お手洗い貸してくんない?」


「うん! もちろん!! 場所わかる?」


「うん、ありがとう!」


 そう言って、中川さんがお手洗いに向かうため一旦この部屋を出た。


 続いて……正孝も親から電話が来たとか何とかで、月野さんの部屋から一旦離脱した。


 ひょんなことから……この部屋には今、俺と月野さんしかいなくなった。


 俺たちはその間も黙々と勉強を続けた。

 すると、彼女、月野さんがその沈黙を破る。


「ん! よいしょ!」


 そう言って月野さんは突如、俺が座ってる場所の真横に座り始めた。


 あの…………月野さん? ちょっと、近くないですかね?


 彼女が近くに座ることによって彼女と俺の肩がぶつかる。

 俺は不覚にも今、ドキドキしてしまった。


 すると、彼女は俺のほっぺたに手をやって


「ねぇ〜山田くんはさ……今、その、好きな人とかいるの?」


 そう聞いて来た。

 俺はまさか彼女にそんな事を聞かれるなんて思っておらずひどく動揺した。

 てか、なんなんだ!? 

 この状況、月野さんが俺のほっぺにてを当ててるってどういう状況!?


「い、いないよ…………」


「そうなんだ……」


 俺がそう言うと彼女は頷いて俺の顔から手を離した。

 一体なんだったんだ? 

 あれは……


「えへへ笑、それじゃ勉強の続きしようか!」


「えっ? うん!」


 俺は彼女がそう言ったから、テーブルに置いていたままにしているシャーペンを再び持って問題を解き始めた。


 ……俺は今ので、ますます彼女の事がわからなくなった。


「ねぇ、山田くん、どこかわからない問題ある?」


 すると、彼女は急に俺に質問した来た。

 俺はそれに対して、正直にわからない問題を提示する。


「ここの問題ちょっとわかんないや……」


「あっ! ここね! ここ、私わかるよ!」


 そう言って彼女はシャーペンを握ってる俺の手の上から自分の手を重ねてきた。


 ……はっ?


「えっ? 何してんの? 月野さん……」


「なにって? 山田くんに問題を教えてあげようとしてるだけだよ!」


「あ、そうなんだ……」 


 どうしたんだ? さっきから彼女おかしいぞ?


 それから、俺は彼女の手が上に重なったまま彼女の手と一緒にシャーペンを動かす。

 そして、彼女は丁寧に問題を教えてくれた。


 俺はドキドキして、まじで、勉強どころじゃなかったが……


 彼女が一生懸命教えてくれようとしてるので、その誠意に答えられるように頑張った。


 ーーそして、勉強会は、続いていく……








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