吉作落とし
<タイトル>
<ポイント>
やりきれなさ
<解説>
まんが日本昔ばなしの中でも、特に「トラウマ回」のひとつとして知られている作品です。
物語の主人公は吉作という村人で、彼は山に登り、食料にするための野草やキノコなどを採っていました。
すると崖の下に、ちょうど人がひとり座れるくらいの大きさの「棚型の岩」が、ちょこんと顔を出しています。
興味を持った吉作は、縄を張ってそこまで降り、しばらく座っていました。
眺望する風景にうっとりとして、そろそろ戻ろうかと考えたとき、おそろしいことに気がつきます。
それは、降りるときに張った縄が、ゴムよろしく物理法則にしたがって、手の届かない高さまで上がってしまっていたのです。
うかつだったと吉作は焦り、さまざまな手を使って縄をたぐり寄せようとしますが、どうにもならない様子です。
彼は人を呼ぼうと必死に叫びますが、何せ山の奥の高いところですから、届きようがありません。
次第に声が枯れてきて、それを偶然耳にした者も、天狗の仕業だなどと不気味がって、逆に去ってしまいます。
だんだんと疲れてきて、吉作はまた棚岩の上にに座りこみます。
ボーっとしながら眼下をながめていると、なんだか不思議な気分になってくるではありませんか。
極限状態とはいえ、彼はここから身を投げれば、あるいは鳥のように空を舞えるのではないかと錯覚してしまいます。
結果はあえて記述しないでおきましょう。
のちにこの崖は、「吉作落とし」と呼ばれることになるのです。
後味の悪すぎる作品ではありますが、それだけに現代にも通じる社会、あるいは人間の暗部なども垣間見え、惹かれる人が多いのかもしれません。
子ども心に複雑さを感じつつ、何か考えさせられた作品です。
いまも落とされ続けている吉作が、いたるところにいるのではないか。
そんなふうに思索してしまいます。
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