背中越しの「好き」

さかなとごりら

背中

 前を歩く自分より大きな背中を追いながら歩く帰り道


 「後ろじゃなくて横に並んで帰ろうよ」


 後ろを向いて私に話しかける彼


 「いやだ」


 私は彼の背中を見るのが好きだから


 彼の背中を見て歩く帰り道が好きだから


 彼は背が高くていい具合に筋肉がついていて少しだけ猫背な彼の背中


 彼の優しくて心配りができる性格が滲み出てる背中


 そんな背中が大好きだ


 あと、たまにチラチラ横に並んで欲しそうに見てくる顔も


 「たまには横に並んで帰りてぇ〜よ」


 「それはごめん。諦めて」


 「なんでいっつも後ろ歩くんだよ」


 「君の背中を見て歩くのが好きだから」


 「なんか変な趣味してんな」


 そう言って、彼は前を向いて歩く


 私は彼の背中が見たいからいつも彼の後ろを歩く


 横に並んで帰ることはほとんどない


 申し訳ないし我儘だと思うけど、彼もなんだかんだそれを認めてくれてる


 彼の優しさが伝わってくる


 自分でも変だとは思ってる


 横に並んで帰るよりも後ろを歩きたいなんて


 普通なら彼も嫌だろうな


 それでも許してくれてる


 だから、その代わりにちゃんと「好き」って伝えるようにしている


 不器用な私なりにちゃんと伝えている


 それを彼はちゃんと理解してくれている


 大好き


 好きが溢れてくる


 だから私は彼の背中に抱きついた


 「好き。君のこと大好きだよ」


 「わかってるよ。ちゃんと伝わってる。

それより俺の背中見なくていいの?笑」


 「うん。もうちょっとだけこうさせて」


 「わかった」
























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