揺れる選択の果てに
翔は、清美の体で働きながら必死に元に戻る方法を探し続けた。
清美としての仕事は順調で、周囲からの評価も高かったが、心の中では常に元の自分に戻ることを願っていた。
何度もネットや書籍を調べ、専門家に相談し、そしてついに、元に戻る方法を見つけることができた。
しかし、その方法を実行するためには、入れ替わった全員の協力が必要であることが判明した。
ある日、翔は仕事を終えて美咲のもとを訪れ、彼女にその方法を伝えた。
田中として生活を送る彼女は、以前よりも自信に満ち、余裕さえ感じさせる雰囲気をまとっていた。
彼の目に映る美咲は、以前とはまるで別人だった。
「美咲。やっと元に戻る方法が見つかったんだ。」翔は緊張した声で切り出した。
「そうなの?それは良かったわね。」美咲は微笑みながら、冷静に答えた。
「でも…その方法を実行するには、全員の協力が必要なんだ。美咲、元に戻りたくないのか?」翔は彼女の反応を探るように問いかけた。
美咲は一瞬だけ視線を逸らし、そして再び翔の目を見つめた。「翔、正直に言うと、今の生活に満足しているの。田中の体での仕事も順調だし、このままでいいと思っているわ。」
翔の胸に重い衝撃が走った。「そんな…どうして?元に戻るべきだろう?俺たちの人生は今、滅茶苦茶なんだ!」
美咲は静かに首を振った。「翔、あなたの気持ちは理解してるつもり。でも、私にとっては、今の方がむしろ望ましい。元の生活に戻っても、また同じ悩みに直面するだけだと思うの。ここまで来たんだから、もう後戻りする必要はないわ。」
翔はその言葉を聞いて愕然とした。
彼女の言うことが理解できないわけではなかったが、納得することはできなかった。
翔にとっては、今の状態が一時的なものであり、早く元の自分に戻りたいと強く願っていたからだ。
その夜、翔は清美にも同じ話を伝えるために会いに行った。
しかし、清美もまた、元に戻りたくないという意志を示した。
「翔、私はこの生活に少しずつ慣れてきているの。学生生活には自由があるし、今のままでも悪くないと思っている。」清美の声には、どこか安堵感が漂っていた。
「清美さん…それでも僕は元に戻りたい。君も本当にこのままでいいのか?」翔は食い下がった。
「正直、元に戻ることに対して不安があるわ。戻ったところで、元の生活に再び順応できるかどうか分からない。それに、今の生活にはもう満足しているの。」清美は静かに言った。
翔はその答えに失望を隠せなかった。「でも、それは一時的なものだろう?本当にこのまま一生を過ごすつもりなのか?」
清美は少し考え込んだが、やがて微笑んだ。「翔、私たちがどれだけ努力しても、結局は自分が選んだ道を進むしかないのかもしれない。私にとっては、このままでいいと思っている。」
その言葉を聞いた翔は、心の底から絶望した。
その様子を見ていた清美は静かに翔を見つめ返し、そして彼の胸を触った。「翔、あなたはこの体になってから何を感じたの?」
翔は驚き、赤面しながら答えた。「最初は違和感ばかりだったけど、今は少しずつ慣れてきた…でも、やっぱり自分の体じゃない。」
清美は彼の胸を更に揉みながら話を続けた。「私も同じように、自分の体に違和感を感じていた。だけど、翔の体で過ごすうちに、少しずつ心地よさを感じるようになったわ。今では、この体が自分の一部になったような気がするの。」
「清美さん…」翔は言葉を失った。「翔、君はこんな胸をぶら下げて、揉まれて感じたり、男に抱かれたりして、本当に元の男に戻れるの?」清美は妖しく笑いながら問いかけた。
清美と美咲の両方が、元に戻りたいという気持ちを持っていないことが、翔にとっては衝撃的だった。
彼は自分が抱いていた希望が、次第に消え去るのを感じた。
そして次の日、翔は田中とも会って話をした。
田中は今や女子高生としての生活にある程度慣れていたが、彼もまた、美咲や清美の態度に戸惑いを隠せなかった。
「翔、俺たちはどうするんだ?美咲も清美も、元に戻る気がないみたいだ…」田中は苦しそうに言った。
「分からない…」翔は頭を抱えた。
「だけど、俺たち二人だけでもどうにかして元に戻る方法を探すしかないのかもしれない。」
「でも…全員の協力が必要なんだろう?」田中は不安げに尋ねた。
翔は深いため息をついた。「そうだ。でも、今の状況じゃそれが難しい…。」
翔と田中はその後も話し合いを続けたが、具体的な解決策は見つからなかった。
二人は今後どうすべきか悩みながらも、現状に対する無力感を感じていた。
彼らは、それぞれが選んだ道の先にある未来に、不安と絶望を感じながらも、ただ前に進むしかなかった。
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