空をつくる

愛美

空をつくる

悲しい、辛い、苦しい。

そんな思いを溜め込んで、日の下で憂鬱と闘う。


日のある間は、明るさのせいで暗い部分が目立ってしまう。

常に明るい人ほど、暗い部分を必死に隠そうと生きる。

私の経験から言うと、それはただのわがままである。

向き合うべき感情に背を向けて、自ら暗黒の沼を深くする。

無意識な自衛なのである。


私は、そんな気持ちを星にする。

空に投げ捨てる。

空に託す。


夜空という大きなキャンパスに、涙という絵具で星を描く。


暗い気持ちは目立つ。

日の下では暗く、夜空では明るく。


星にした気持ちは、高く煌びやかに、暗い空を飾る。

いつの間にか、下を向いていた顔も、上がっていた。


星がよくみえる夜は、悲しい。

あまりの美しさに、胸が痛む。


また何かあったのかと、空に心配されている気がして。


でもその美しさは、一夜で消え去る。


明るくなってきた頃、悟る。

こんなにちっぽけなものだったのかと。


また世界は明るくなる。

また私は暗くなる。


星にしたはずの気持ちが、またまとわりつく。


また夜が来る。

また星にする。

繰り返す。


そろそろ空に謝らなければ。

それもまた星にして。


私がつくったこの空を、どこかの誰かが綺麗だと言ってくれるまで、

私は、空をつくり続けるだろうか。


いつか明るい気持ちも星にして、日の下で隠さず生きたい。


この望みが、私の最初の明るい星。



Fin.











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空をつくる 愛美 @hubuki0610

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