うわさの悪女男爵マリ

楽使天行太

プロローグ

全身黒ずくめの男が包丁をもって、一歩近づいてくる。


その男は、マリを殺す気だった。


ナタのような肉切り包丁のうえを月明かりが泳ぐ。これなら少女を殺すことなど、かんたんなことだろう。


むらさき色の瞳は、失望したようにマリを見つめていた。

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