第10話

水泳部の練習が終わり、プールサイドに集まった理科と部員たちは、各自のシャワーを浴びるためにロッカールームに向かっていた。理科は初めての練習を終え、汗と水分で濡れた髪を拭きながら、少し疲れた表情を浮かべていた。


水泳部の練習が終わると、理科たちは濡れた水着のままロッカールームへ向かった。プールサイドに差し込む夕方の柔らかな陽光が、蒸気でほんのり曇った窓に反射している。水のしずくが地面に落ちる音と、部員たちの足音が静かに響いていた。


ロッカールームに入ると、漂うシャンプーの香りと、シャワーから聞こえる水音が混ざり合い、独特の落ち着いた空気が広がっていた。理科は自分のロッカーを開け、水着を外してタオルを肩にかける。


シャワールームでは、何列にも並んだ仕切りの中で、部員たちがそれぞれの汗と塩素を洗い流している。理科も空いている場所に入った。


理科はシャワールームの仕切りの中に入り、扉をそっと閉め、練習で疲れた身体をゆっくりと壁にもたれさせ、シャワーの蛇口をひねる。最初は冷たい水が彼女の肩に滴り落ち、それがだんだんと温かさを帯びていく。水滴は、練習で濡れた髪を伝い、首筋から背中へと滑り落ちる。肩甲骨を覆うように流れる感覚は、筋肉の疲労をほんの少しだけ和らげてくれるようだった。


冷たさと温かさがちょうどよく混ざった水が肌に触れ、練習で疲れた体が少しずつほぐれていくのを感じた。


理科はゆっくりと顔を上げ、シャワーヘッドから落ちてくる水流を額で受け止めた。冷たい塩素の匂いが少し残る肌が、次第に温かな水に浸食され、プール特有の感触が洗い流されていく。彼女は目を閉じ、滴る水が頬を滑る感覚に集中した。水流が唇の端を濡らし、胸元へと伝わっていく。練習で速く泳ぐたびに張り詰めた胸の筋肉が、シャワーの温かさで解けるような気がした。


壁に設置されたシンプルなボディソープのボトルを押しながら、理科は自分の手で泡を立てた。湯気に包まれる中、肩や腕の筋肉をゆっくりと揉みほぐす。


彼女はそっと手を動かし、泡立てたボディソープを肌に馴染ませる。両腕をゆっくりと撫でるように洗い、筋肉の緊張を一つひとつほぐすように指先を滑らせた。練習で酷使した肩と二の腕は少し重たく感じたが、彼女は丁寧にそれらを洗い流した。ソープの滑らかさが肌の上で消え、シャワーの水流とともに流されていく。


続いて、理科は指先で髪を梳きながら、シャンプーを泡立てていった。練習中、プールの水で絡まった髪をしっかりとほぐしながら、泡が頭皮に触れる感覚を楽しむ。両手を動かしながら、首筋から肩へと続くラインを優しく洗った。水が髪を伝い、背中を流れ落ちるたびに、心地よい刺激が全身を包み込む。


彼女は腹部をゆっくりとなぞるように洗い、呼吸を深く整えながら水流を感じた。水滴が指先を伝って脚へと落ちると、練習で疲れた太腿やふくらはぎを丁寧に洗い流していく。足の裏をそっと動かし、水が流れる感覚を確かめるようにして、最後まで自分の身体を慈しむようにシャワーを浴び続けた。


仕上げにもう一度シャワーヘッドを手に持ち、頭から全身へとお湯をまんべんなく浴びせる。湯気が狭い空間を満たし、濡れた肌が次第に滑らかな冷たさを取り戻していく。シャワーを止めた理科は、深呼吸をしながら壁に軽く手をつく。


隣から聞こえる部員たちの談笑が、疲れた身体に心地よい安心感を与えてくれた。


「今日のタイム、どうだった?」

「まぁまぁかな。理科さん、初めてにしてはすごく安定してたよね。」

「そうそう、フォームが綺麗だった!あれ、ちゃんと練習してたの?」


部員たちの会話がシャワールーム全体に響き渡る。理科は声をかけられるたびに、仕切り越しに笑顔で答えた。


「ありがとう。でもまだまだ練習が必要だと思います。みんなに追いつけるように頑張ります!」


シャワーを終えた理科が、濡れた髪をタオルで拭きながら鏡の前に立つと、湯気に包まれた鏡の中に自分の少し赤らんだ顔が映っていた。練習で少し疲れたものの、満足感と充実感が表情に滲んでいる。


部室に戻ると、すでにシャワーを終えた部員たちが、床に座り込んだり、ベンチに腰掛けたりしながら、水筒を片手に軽いおしゃべりを続けていた。


白崎がロッカールームに入ってきて、手に持った記録ノートをパラパラとめくりながら言った。

「みんな、今日もよく頑張ったね。次回は少しスタート練習に重点を置く予定だから、各自でイメージトレーニングしておくといいよ。」


その言葉に部員たちは一斉に「了解です!」と元気よく返事をする。理科も白崎に向かって「ありがとうございます!頑張ります!」と小さく頭を下げた。


理科がロッカールームを後にして外に出ると、夕方の涼しい風が湿った髪に心地よく当たった。遠くから聞こえるグラウンドの歓声や、キャンパス内を行き交う学生たちの笑い声が、彼女の心に柔らかいエネルギーを与えてくれるようだった。


(モノローグ)

「シャワーで汗と疲れを流したら、また明日も頑張れそう。みんなと一緒なら、どんな練習も楽しめる気がする。もっと成長して、もっと上手くなりたい。」


ロッカールームの中は賑やかな雰囲気で、部員たちが談笑しながら荷物を整理している。理科もその輪に加わりながら、白崎に話しかけた。


理科

「白崎さん、今日は本当にありがとうございました。最初は緊張しましたが、みなさんと一緒に泳ぐうちに楽しくなってきました。」


白崎

「理科さん、今日はよく頑張りましたね。最初は誰でも緊張するものです。これからもっと慣れていけば、さらに良い成果が出せると思います。」


白崎は理科に優しく微笑み、部員たちもその言葉に頷いた。部員たちが話に参加し、練習の感想を語り合う中で、理科も少しずつリラックスしていった。


部員A

「今日のフリーの練習、結構良かったよ!理科さんもすぐにスピードをつけていたし、安心したよ。」


部員B

「これから一緒に練習するのが楽しみだね。みんなで支え合っていこう!」


理科は彼らの言葉に心から感謝し、自分も仲間として受け入れられた実感を持った。ロッカールームの鏡で自分の姿を見ながら、練習の疲れを感じつつも、内心の充実感が広がっていた。


理科(モノローグ)

「今日は本当に新しい一歩を踏み出せた気がする。最初は緊張していたけど、みんなが支えてくれて、少しずつ楽しさを感じることができた。これからも、もっと成長していけるように頑張りたい。」


理科はロッカールームでの支度を終え、部員たちと共にプールから出た。白崎もその場にいて、部員たちと一緒にリラックスした会話を続けていた。


白崎

「理科さん、来週も同じ時間に練習がありますので、よろしくお願いしますね。」


理科

「はい、よろしくお願いします。」


理科は白崎に軽く会釈し、部員たちと共にロッカールームを後にした。外の空気に触れながら、これからの練習や新しい挑戦への期待が高まっているのを感じた。


理科(モノローグ)

「新しい環境に慣れるには時間がかかるかもしれないけど、これからも一生懸命に取り組んでいこう。まだまだ先は長いけど、一歩一歩前進していけたらいいな。」


理科はそのまま大学のキャンパスを歩きながら、未来の練習や仲間たちとの関係を思い描いた。彼女の心には、これからの成長と挑戦への意欲がしっかりと根付いていた。

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