蝶鼠夢幻伝
かぐらみや
序
二つの波
皇帝が死の床についた、という知らせが皇宮に走ったのは夜半過ぎのことだった。数年前から都に蔓延した天然痘がようやく落ち着きを見せ始めたころになって、とうとう皇帝が罹患してしまったのだ。頑健だった皇帝も病には勝てなかったようで、三日三晩高熱にうなされ、宮廷医の懸命の治療や祈禱もむなしく昏睡状態に陥ったのである。
まだ皇帝の喪が明けないうちから水面下にあった跡目争いが表面化し、朝廷は皇帝の死と合わせてぐらぐらと揺れているような状態だった。皇帝の甥であり皇帝に次ぐ権力を誇る
武芸に優れ、絶大な財力と人望を集める「人たらし」頑兼はわずかに皇太子派を上回る勢力。しかし正当な血筋を守ろうとする保守派もなかなかに強い。両者拮抗したなかでの皇帝の崩御。皇太子派は大打撃であった。皇太子を守っていた強大な後ろ盾が割れてしまったのだ。
頑兼は風にあおられた炎のように、ますます強大な力を集めつつあった。
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