第42話 兵士
俺とケイトの間に足首の無く手足のひん曲がった兵士の死体が横たわる。
分断が狙いか!
ケイトが転がって来る兵士を避けたタイミングで、対峙していた転移者がケイトに向かって飛び掛かった。
「俺から目線を離すからだよ!」
転移者は転ぶ事も無くケイトへ接近すると、サーベルを振りかぶった。
『ケイト!』
だが、転移者はサーベルを振り下ろす事が出来ずに、後ろへと尻もちを付く様にして転んだ。
「くっ、髪を!」
そこへケイトの2本の短剣が飛んでくる。
ケイトの狙いは首の服から出ている部分だろう。
服の上から短剣で斬り付けてもどれだけのダメージを与えられるのか判らないからだ。
ギィン!
転移者は片方の短剣を右手のサーベルで弾くと、左手でもう片方の短剣を掴んだ。
「ぐっ」
転移者は素手の左手で高速で飛んでくる短剣の刃を掴んだのだから、男の手の平はザックリと斬れているのだろう。
「これで短剣は1本だ」
転移者の男はケイトに見せつける様に短剣を掴んだ左手を掲げて見せる。
「だから何?」
サーベルを支えにして立ち上がろうとする転移者の男が顔を仰け反らせて後ろへと倒れ込む。
「また俺の髪を!」
そこへ間髪入れずに短剣が転移者の男へと迫る。
再び尻もちを付いた状態のまま飛んでくる短剣をサーベルで弾く。
ギィン!
弾かれた短剣は中空で制止すると、再び転移者の男へと向かう。
ギィン!
ギィン!
ギィン!
凄いな、尻もちを付いた状態なのにフェイントも入れた短剣の攻撃を全部弾いてやがる。
身体強化のスキルってケイトは言ってたけど、反射神経を上げるスキルなんかも使っているんだろう。
何度かそんな攻防の繰り返しをしていると、また兵士が2人ケイトへと向かって飛んで来た。
『兵士が2体ケイトに向かって飛んでくる!』
『コイツ! しぶといのよ!』
『避けろ!』
「ああああああああーーーっ!!」「うあああああーーーっ」
兵士達が悲鳴と共に飛んでくると地面へと叩きつけられた。
ガシャッ! グシャッ!
勢いの付いた兵士達はケイトに向かって転がって来る。
ガガッ・・ゴッ・・ズザザッ
ケイトは転がって来る兵士を大きく避けて飛ぶと、俺の側へとやって来た。
『短剣取られちゃった』
『身体強化のスキルか・・凄いな』
クチャグチャになった兵士の向こうに、サーベルと短剣を二刀流の様にして構える転移者の男の姿があった。
左手はハンカチの様な物で傷を覆っている。
この短時間の隙で応急処置したのだろう。
ケイトがアイテムボックスを張り付けても邪魔にはならない位置へと来てくれた。
けど、転移者達にはアイテムボックスの貼り付けを見られているし、地面に張り付けたとたん兵士の上に乗っかるぐらいはするだろう。
転移者の男はゆっくりとこちらへ向かってやって来る。
『あいつ動きを止められるか?』
『転ばせる?』
『転ばせられればいいが、動きが止まればそれでいい』
『なら、今度はハゲるぐらいに引っ張ってみるよ』
ハゲる?
時折、転びそうになるのを踏ん張っているのはケイトが転ばせようとしているからだろう。
「お前らのスキルの使い方は理解したぜ。こうやってゆっくりすり足で進めば転ばねぇ」
キィン!
キィン!
変化球の様な動きで襲い掛かるケイトの短剣を、サーベルと短剣で弾きながらこちらへと近づいて来る身体強化の転移者。
上空には兵士2人をぶら下げて滞空している飛行の転移者。
もう"おかわり"を持って戻って来たのかよ。
頭上のアイテムボックスの盾を外すと血を被るか・・・
いい作戦だ。
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