事件番号1 佐藤功軍医中佐の闘い

〇軍事法廷控え室(午前)


Mr.カトウ「わたしは、日系アメリカ人3世、日系人であることに差別をうけながらも軍隊に入って日本語ができるという理由でこの軍事法廷の通訳に選ばれた。今は日本民族と言うよりもわたしのアイデンティティーはアメリカ人であること、星条旗への忠誠は絶対! どんな戦犯が、被告人であろうとも忠実に職務をはたすのが、わたしの任務! さてさて、そろそろ開廷の時間だ準備をしないと」


〇 軍事法廷(午前)


Mr.カトウ「ただいまより、731部隊の捕虜虐待について審議いたします! Dr.佐藤功前へ」


n白いヘルメットをかぶったMPに連れられて銀縁の眼鏡をかけた中年の男が証言台に立つのであった。彼は全くおびえる気配もなく堂々としていた。


Mr.カトウ「Dr.佐藤! あなたは捕虜に天然痘のウイルスを用いた人体実験を行った! 事実か!?」


Dr.佐藤「あぁ確かに事実だ・・・・・・」


Mr.カトウ「あなたはそれがジュネーブ条約に違反すること知っていましたか!?」


Dr.佐藤「あぁ知っていた・・・・・・」


Mr.カトウ「ならば何故その人体実験を行った!?」


Dr.佐藤「どう答えるべきかな? 建前として言えば、大日本帝国と天皇陛下のため」


n法廷にいた日本人たちは起立した


Mr.カトウ「それが建前なのならば本音は!?」


Dr.佐藤「本音を言えば医師として、大日本帝国の臣民! そして大東亜共栄圏に、全世界から天然痘を根絶させるためだ!」


Mr.カトウ「だが、それはジュネーブ条約に違反している事をを知っていて行った!その罪は自覚しているか!?」


Dr.佐藤「確かにわたしはジュネーブ条約には違反した・・・・・・だが、医師としての誓い! ヒポクラテスの誓いに背いた事は一度もない!」


nその大きな声に法廷にいるすべての人が驚愕した。


Mr.カトウ「オーマイゴッド! ジーザス・クライスト! Dr.マッドサイエンティスト!? つまり研究のためであれば何をしても良いと思い捕虜達に天然痘ウィルスを感染させた間違いないか!?」


Dr.佐藤「そうだ・・・・・・だが、わたしは医師として彼らに、ありとあらゆる手を尽くして治療した! 諸君らの祖先は何をしたかわたしは知っている! 諸君らの祖先達は北米大陸の先住民族に天然痘のウィルスのついた毛布を渡して感染させて彼らを根絶やしにしようとし、さらには彼らの土地を搾取! 略奪したではないか!? それに比べたらわたしの行為は軽い罪だと思わないないかね?」


n軍事法廷にいる裁判官長は怒りながら木槌をならして発言を控えるようにと怒鳴り。そして、傍聴人たちもざわついていた。しかし、Dr.マッドサイエンティストと呼ばれた男は続けた。


Dr.佐藤「わたしは多少なりとも英米法、諸君らの法を帝国大学で学んだ・・・・・・諸君らの国には司法取引と言うモノがあるようではないか!?」


Mr.カトウ「黙りなさい勝手な発言を続けては・・・・・・」


nそのとき1人の裁判官を務めるドイツ系アメリカ人が興味深そうに発言を続けさせるようにMr.カトウに告げる。


Mr.カトウ「裁判官閣下からの許可が出た続けてよろしい」


Dr.佐藤「わたしの研究データを渡す代わりにわたしを減刑してくれないかね? そうしないのであれば・・・・・・」


Mr.カトウ「そうしないのであれば?」


Dr.佐藤「わたしも1人の医師としてやりたくはないが・・・・・・弟子達に命じて研究データすべてを焼却処分する!」


n法廷は凍り付いて軍事法廷の裁判官達はヒソヒソと話し合った。


Mr.カトウ「本日は、閉廷とする! 判決は後日に! 起立! 礼!」


nそうして裁判官達の後に続いてMr.カトウは退廷していった。背後には何か恐ろしいモノを感じながら・・・・・・

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法廷記録 「名も知れぬ戦犯達の軍事法廷」 猫川 怜 @nekokawarei

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