第7章:最終選択
麗子の意識が再び浮上したとき、彼女は無限に広がる光の空間にいた。周囲には、虹色に輝く幻想的な光の粒子が舞っている。まるで宇宙の誕生を目の当たりにしているかのような壮大な光景だった。
「ここが……最後の場所?」
麗子の声が、光の粒子に反響して広がっていく。突如、目の前に二つの扉が現れた。一つは深い紫色で、もう一つは淡い青色だった。
紫の扉からは、紫乃の温かな気配が漂ってくる。青の扉からは、葵の清々しい存在感が感じられた。
「麗子、最後の選択の時が来たわ」
紫乃の声が、どこからともなく聞こえてくる。その声は優しくも、どこか寂しげだった。
「紫乃……」
麗子は紫の扉に手を伸ばしかけた。しかし、その時、青の扉から葵の声が響いてきた。
「麗子、お願い。まだ、あなたには生きる価値があるはず」
葵の声には、切実な願いが込められていた。麗子の心が揺れる。
麗子は両方の扉を見つめた。紫の扉からは、永遠の安らぎが約束されているような気がする。しかし同時に、それは全てを諦めることでもあった。
一方、青の扉は未知の可能性に満ちている。しかし、そこには苦しみや痛みも待っているかもしれない。
「どちらを選べばいいの?」
麗子の問いかけに、光の粒子が揺れ動く。その時、麗子の心に、これまでの旅で得た悟りが蘇ってきた。紫乃も葵も、そして自分自身さえも、大きな存在の一部に過ぎないのだと。
麗子は深く目を閉じ、自分の心の声に耳を傾けた。紫乃との過去、葵との可能性、そして自分自身の本質。全てが、麗子の中で一つに溶け合っていく。
ゆっくりと目を開けた麗子の瞳には、強い意志が宿っていた。決意に満ちた表情で、麗子は前を見つめる。
「私は……」
麗子が一歩を踏み出したその瞬間、光の粒子が激しく舞い上がった。選ばれなかった扉が、光と共に消えていく。
「よく頑張ったわね、麗子」
紫乃の声が、遠くなっていく。
「どんな選択をしても、あなたは素晴らしい」
麗子の体が、選んだ扉の色に包まれていく。それは、これまで感じたことのない、深い安らぎと共に訪れた。
「さようなら、紫乃。そして……ありがとう」
麗子の最後の言葉が、光の空間に響き渡った。
そして、全てが眩い光に包まれ、麗子の意識は新たな次元へと旅立っていった。
この選択が、麗子にとってどのような結果をもたらすのか。それは、まだ誰にもわからない。ただ、麗子の表情には、深い悟りと共に、新たな冒険への期待が垣間見えていた。
光が最後の輝きを放つ中、麗子の姿は静かに消えていった。しかし、それは終わりではなく、新たな始まりの予感に満ちていた。
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