大垣

蝉がせりせりと鳴いて、

冷蔵庫の茸はミイラみたいに干からびていた。

台所は野菜屑や黄ばんだまな板がそのままになっていた。

貰ったスイカの赤い肉は腐っていて、ぬめぬめとした排水溝で嫌な臭いを出した。

炊飯器の米は炊いたまま忘れられていて、おかゆみたいにぐちゃぐちゃになっていた。

カップ麺はスープを残し箸を乗せたままマスタードやブラックペッパーやペットボトルが散らばった机の上にあった。

トイレと洗面台は黒い染みを作り、

リビングには毛やちりや服や小銭が散らばっていた。

洗濯は一時間ぐらい前にとっくに終わっていてそのまま洗濯機の中に放置されていた。


僕の使うものはいつもどこか汚れていた。

子供の頃から提出しなければならないプリントにいつのまにか油がついていたり、曲がっていたりした。服はいつも依れていて点々の汚れがあった。

僕はそれがたまらなく情けなく、恥ずかしくて、

それを一生懸命になって隠そうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大垣 @ogaki999

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る