時計トロッコ
トロッコの階段がわんさかあって、転がったマトリョシカは軌道を逸した。一段一段きをつけていたら、山なりに包帯が投げられた。白い尻尾が長くなっていく。こんななかでも、やはり一段一段きをつけた。古びたアキレス腱が切れてしまって転げおちた。マトリョシカが、どうやら落ちた人への予兆だったらしい。四角い箱のなかに、ぱっくり割れた壺があって、そこに落ちた人が入り込んでしまう。やがてトロッコの階段から墜落してきたトロッコで、草履虫のようにされてしまった。あんな風になっては、子のかえらぬ卵だと、この惨状を眺めていた時計屋の店主はいった。陽光はやさしくただ窓から突き刺さるだけで、その階段を断罪はしない。時計屋の店主はまぶたの疲れを言わないで、とにかく落ちた人をピンセットで挟み取ろうとする。ただその落ちた人は、ひらべったくなった自身に満足して巻物のようにまとまるともう店主のピンセットで追えない窪みで安らいでしまった。それでたくさんのトロッコの階段がきょうもトロッコをたくさん落としている。
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