ヘルエットケット
外レ籤あみだ
小さな窓の少女
小さな窓のなかで暮らしている少女があった。鬼灯のような瞳でなにかをみている。秒刻みな大人の歩みが彼女の眼下では広がっている。
きっと街は彼女を中央においてできあがっている。すくなくとも彼女にとっては。
そんな彼女のおもちゃ箱は変な品で埋め尽くされていた。紙コップのなかに入った犬のフィギア、ネジを二三個なくした自動走行馬、歌わなくなったオルゴールのなかのお城。
きっと宝物でがらくたであった。母親にみつかったら、捨てられるから大切にしている。母親が捨てないなら、おそらく彼女が捨ててしまう。
あるとき自動走行馬がいなくなった。理由はいちばん大きなネジを探しにでたためだった。彼女は母親が捨てたものだと思ったから、溶ける氷のように泣いた。しかしあとでベッドの下でネジを咥えているのが見つかった。母親がプラスドライバでネジを押し込んだため治った。
彼女は馬の居所を知らなかったおかげさま、あることを知った。その日から小さな窓には彼女は映らなくなって、秒刻みの足音のなかに混ざるようになった。彼女は動かずに街の端っこに追いやられた。たぶんもう二度と彼女や母親がおもちゃ箱を捨てることはない。ただおもちゃ箱がひらくことも、また二度とない。
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