エイリアンVS生物兵器~銀髪美女エイリアンに助けられたので、今度は自分一人でも生き残れるように鍛えてもらったら世界の危機を救うことに~
第47話 某所の会議室。そこではエイリアンの銀髪美女が自衛隊にある物を与えようとしていた
第47話 某所の会議室。そこではエイリアンの銀髪美女が自衛隊にある物を与えようとしていた
某所の会議室、機密性を重視した窓のない地下のワンルーム。
その室内にある大型スクリーン脇の演台で説明を終えると、私――マリーはU字型の会議テーブルを流し見ながら口を開く。
「――以上が、日本国内の防衛に必要な軌道防衛
居並ぶ者たちが一様に難しい顔で頷いてくる。無数の徽章を胸に付けた初老の
これほどの役職の者たちが一同に会するのは少々大袈裟な気もするけど、スクリーンを見てもらえればそれも同然のことだった。
そこには円形のプラットフォームに大まかな半球のユニットが映っている。モデルケースとしてNOX軍の基地に設置されているイオン砲の画像とその大まかなスペック。周回軌道までの長射程にどんな装甲プレートも貫通する破壊力は、核兵器以外の兵器を凌駕する代物だ。
こんなものを提供されるなんて、後で一体どんな見返りを求められるか分かったものじゃない。彼らがダンマリを決め込むのも当然でしょう。
けれど私には関係のないことよ。手元の個人端末のファイルを参照しつつ淡々と続ける。
「補足させていただきますとこのタレットはモジューラー化されており、組み立て自体は一週間程度で可能です」
「たったの一週間ですか……」
「これは……敷設するよりも、住民への説明のほうが、時間がかかりそうだ」
「そうでもないですよ。インフラの整備やパワーカップリングの調整で結局半月は必要ですから」
官僚連中に向かって私が説明を付け加えると、
「いえ、それでも十分お早いですよ……」
防衛大臣の富田さんは、年齢のせいか薄くなった頭皮を困り果てたように小さく振った。やはり防衛大臣クラスになると『分かる』のでしょう。
日々情報番組でVICSの危険性を訴えてきた私だけど、ニュースキャスターには軽く見られ、視聴者からは「ラ〇ドール型エイリアンが侵略してきて地球がヤバいんですね分かります」とふざけたコメントをされ、その下には「この子のことじゃねーよw」というコメントもあったり……そしてさらに不快なことにある地域を歩けば「軍服コスプレ銀髪少女キタ! 一枚いいですか!」と迫られ、一枚といわず何枚もやたら低いアングルから写真を撮られたりして、まったくもって敬意も危機感もなかった。
でもここなら私は特殊作戦グループの指揮官として正当に扱われる。
「この資料によると、イオン砲を守るエネルギーシールドに必要な電力はこちらでまかなうことになっていますが、最低でも三千万kWhって……」
「大都市でもない限り無理ですよ、こんなのは」
「いいやそれでは住民が使用する分が足りなくなる。最悪街中が停電だ」
「じゃあ選ばせてみては? 街が焼かれるのがいいか、電気が使えなくなるのがいいか」
私が唇を皮肉げに小さく歪めると官僚たちは黙った。
「決まりましたかな? ではこの防衛タレットは陸自の管轄ということで――」
「いえいえ、これは防空兵器ですよ? だったら空自でしょう。陸自さんには悪いですが」
平野陸将に目ざとい視線を送る南雲空将補。利権をめぐってバチバチと火花を散らす彼らに向かって、魚見海将が割って入る。
「あの海自は――」
「無関係でしょう。これは我々と陸の問題です」
「まったくその通りですな」
「そうですか。ああ、じゃあなんで呼ばれたんだろうか。おかしいなぁ」
空と陸の将の息の合ったその態度に辟易してか、魚見海将が首を捻った。段々白髪の頭から哀愁が漂ってくるみたいで居た堪れない。
でも陸に設置するタレットが海上自衛隊の領分ではないのも事実。VICSに対抗できる革新的な兵器の調達競争から弾かれるのは必然だった。
私は端末で時刻をちらっと確認した。
もうすぐ十二時……早く終わらせないと朱宇くんたちとお昼を食べられなくなるわ。
私は彼らを急かすように厳しい口調で告げる。
「こちらも予定が控えているんです。どこでもいいので早く決めてください」
「どうしますか? 六箇所は必要みたいですが」
「大臣、現場としては陸自が四基、空自が二基で運用するのが妥当かと」
「お待ちください。どう考えても潤沢な資金のある空自の方を多くするべきです」
「いいや駐屯地の数から考えれば陸自だ。どの都道府県にも大抵あるから柔軟な対応ができます」
これはもうしばらくかかりそうね。私は揉めている彼らを尻目に、少し席を外しますと言ってから通路に出ると、電波が遮断されていないエリアに向かった。
『ごめんなさいね。お仕事が長引いちゃったからお昼一緒に食べられないわ……だから私のことは気にしないで先食べてて。たぶん、間に合わないから』
端末がオンラインになると、私はそんなメッセージを朱宇くんに送った。
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