いつかやっと忘れて

水無月うみ

第一章

プロローグ

 変わらないものなんてない。

 世界は常に変化で溢れている。

 今この瞬間にも、昨日とは変わって青々としている空の中を、さっきまではいなかったスズメやカラスたちが飛びまわっていて、さっきまではここになかったはずのどこかの落ち葉が舞っている。

 ずっと同じだ、などといった保証はどの事物にも与えられない。

 すべては必ずしも何かしらで変化していっているのだ。

 一ミリでも、一メートルでも。一秒でも、十秒でも。

 でもそれは、あまり重要なことでもない。

 この流れている時間の中を、この世界の中を、変化は誰にも気にもとめられずに起こっているのだから。

 しかし例外もある。

 変化は時によってはあまりに重要なこととなるのだ。

 それはその変化の矛先にとって良い変化であるかもしれないし、悪い変化であるかもしれない。

 でも変化は間違いなく起きている。

 だから、変化を嫌う場合も好む場合も、その両方が今この瞬間に両立しているのだ。

 どちらなのかは人それぞれ。

 必ずしもどちらか一方になるとは限らない。


 ――ずっと昔、私はあまりに大きな変化を経験した。

 だがその時の私が、そして今の私が、その変化を良い変化だったとか、悪い変化だったとか、決まり悪いが言うことはできない。

 その変化が私に何をもたらしたのかも、私がそれに対しどう思っているのかも言うことはできない。

 それは私がその変化について真剣に考えようとしていないということがある上、何か一つでも言葉として表すことができたならそれで嬉しいぐらいに、言葉で表せる領域はあまりに限られているからだ。

 と言うと、私は少し悲しい気持ちにもなる。

 でも先述のとおり、これだけは言えるということもあるのだ。

 それは、それが私にとってあまりに大きく重要な変化であった、ということだ。

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