LAST RESORTED

釣ール

CHAPTER: 我要你消失

 人間ってチョロい。
 

端的たんてきに言ってしまえば近ければそれでいいという結論に至った。
 


 俺たちは俗に「インフルエンサー」と呼ばれている。


 
非日常を俺たちは動画にしてテレビで目立っていた芸能人を引きずり下ろして金を得る。


「よお。今日も酒が美味いな!知的レベル下げて玩具レビューするだけで今でも稼げるぜ」


 オタク嫌いの「フカトチャンネル」は昔、大好きだったコンテンツのぬいぐるみを子供時代に旧友に奪われてしまったらしい。


 
それを根に持っているわけではないらしいが多分トラウマなんだろう。
 子供も嫌いになったという話は昔酔っている時に聞いた。


 
だからどう販促はんそくすれば子供と保護者ほごしゃの注目を浴びるのか研究できるのだろう。


 
ふん。
 

その勉強熱心な姿勢は他のインフルエンサーとは違う。


「いやあ、蜂退治はちたいじだけじゃ食ってけなくて適当にスーパーで買った食材を飼うだけで金が手に入る。素晴らしい世の中になったよねえ」


 こいつは〝鮫2式さめにしきチャンネル”
 他の生物系インフルエンサーから注目を浴びているが昔から弱い者いじめが大好きなクズだ。
 だが俺はこいつが嫌いだが付き合う分にはちょうどいい。


 
本当かは知らないが、多頭飼たとうがいの両親にペットよりもひどい扱いを受けて育ってきたから本当は生きている全ての存在が気持ち悪いのだろう。


 
そんな両親を早くに亡くしたらしいが多分こいつは…
 まあ俺に関係の無い話だ。


 俺は業者だ。主に「考察」と呼ばれる類の。
 

SNSでいきどおる奴らは馬鹿でしかないことを知った。


 
昔から有名漫画には謎の陰謀論と感想を含めた如何いかがわしい書籍をひっそりと出版する奴もいた。


 俺はそれを読み、SNSでそのコンテンツの有権者らしい連中を探って考察動画を作り生計を立てている。
 

今は小さな会社だがフカト、鮫2式も合わされば上手く稼げる。


 
収益に関しては今後先細さきほそる可能性も高いが俺たちの目的は馬鹿な信者を見下しながら金を得るというのがモットーだ。


 憎いのさ。


 
普通に働く社会を掲げながら低い賃金で高い税金を払う。
 

そして人間は欲深い。
 

だから今日も俺たちは動画を作る。大した労力もかからない。


 
敷居しきいは高く感じた編集も何度もやればコツは掴める。
 こんなことなら大学生活もっと遊んでおけばよかった。


 
だがそれも昔の話だ。


 俺も馬鹿だった。


 そして思いの外、信者も馬鹿だった。
 それだけだ。


 そうして今日も動画をアップロードしていた。
 

たまに熱心な考察対象のコンテンツのファン…いやそれも死語しごか。
  そんな輩に著作権侵害で通報されるがどうせそいつらも他のグレーな動画を見ている。


 
俺たちを甘く見るなよ。


「ここ…に…」


 なんだ?

 
不気味なノイズ。


「フカト?お前また気持ち悪い役者のセリフをネタにしてるのか? 」


 しかしフカトは動画を編集中だった。


「おいおい。俺はそこまで染まってねえよ」


 気の所為せいか。


「ここに……お前の……お前の……」


 なんだ?
 

ストレスフリーの俺に幻聴げんちょう


 
今度は鮫2式の奴が?
 いやあいつは今日は留守だ。

 
どうせ自宅で撮っているのだ。


「ここに……お前の……お前タチの……墓場を……」


 なんなんだ!
 俺は大声を出した。
 驚くフカト。


「さっきからなんなんだ?」


 気の所為か。


 ピンポーン!

するとインターホンが鳴った。

 
フカトがまた玩具を頼んだのだろう。

 
ドアに向かっていった。


 少し顔でも洗うか。そうして台所に向かう。


「ぎゃあああ……ああ……なん……で! 」


 水を浴びている最中に悲鳴が聞こえた。
 驚いて玄関に向かうとそこには血もださず倒れているフカトの姿と何故かここにはいない鮫2式が倒れていた。


 
な、何が起きている?


 
ぐあっ!


 
俺は自室の壁に叩きつけられた。


 
あっあぁぁ…呼吸が!そして衝撃が全身を襲う。


「き、貴様……何者だ? 」


 すると奴は俺の断末魔だんまつまの前につぶやいた。


裂獲ざえる。もうすぐ死ぬお前に対するせめてもの情だ。 」


 そして俺の光はついえた。



 ━━━━後に三名の遺体が事務所から見つかった。

 
 一人は壁に骨の状態で組み込まれていた。

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