神様の憂鬱
神様の憂鬱-01 はあっ!?オレが神様ぁ〜!?
「やあ!神々の世界へようこそ〜」
「···はぁ?···え?···ここは、どこだ!?」
「む〜!話を聞いてなかったな〜!神々の世界だよ!」
「···マジ?」
「マジだよ!キミがいた世界にこんな場所はないでしょ!?」
···見渡す限り何もない、真っ白な場所だった。部屋でもないし、外···、なんだよな?
えっ!?オレ、本当に神の世界にやって来たの!?
落ち着け落ち着け!まだ慌てるような時間じゃあない!バスケの試合じゃないんだ!とりあえず深呼吸をしよう!···深呼吸ってどうやるんだったっけ!?まだ混乱してるぞ!?
そうだ!レディ〜オ体操第1だ!最初は大きく息を吸って
すーー、はーー、すーー、はーー。
···うん。ヨシ!落ち着いたぞ。さて、どうしてこのような状況になったかを思い出そう!
あれは、仕事が休みの日だった。久々に買い物しに町中へ出かけた時の事だったな。
アーケードの入る手前で緑色の髪で天使っぽい変な格好した子がチラシを配ってたんだよ。
最近はスマホで広告を手軽に出せるってのに、ポケットティッシュもないチラシなんて誰も取らねっつーの。
変な格好した子は一生懸命チラシを配ってたが、まったく誰も受け取ろうとはせずに無視だ。人によっては罵声を浴びせてたな。
オレも無視して通り過ぎようとしたんだけど、何故かその子が気になったんだよ。
そして···、チラシを受け取ってしまったんだ···。
「ありがとう!お兄さん!ちょっとだけ時間あったら説明したいんだけど、いいかな?」
おいおい···、キャッチセールスかよ!ここの条例で禁止されてるの知らないのか?
オレは無視してそのまま通り過ぎた。チラシは···、ここで捨てたら怒られるな。どこかのゴミ箱に捨ててしまおう。
そうして、買い物を終えてから昼食にするために某ファストフード店に行った。さっさと帰りたかったから事前にモバイルオーダーしておいて、カウンターで並ばずに受取ってさっと食べた。
ここで、さっきのチラシが気になった。紙1枚だし、ここで包み紙と一緒に捨ててしまえ!って思ったんだよ。
カバンからチラシを取り出して見てみると···
『移住者募集!空家が多くてピンチです!今ならキャンペーンとして、家と移動手段、移住費用を全額当方で負担します!しんどくない在宅ワークのお仕事も提供!ぜひご検討ください!詳しくはこのコードからアクセス!』
···なんじゃ?この怪しいのは?明らかに普通じゃあない。
だいたい移住なんて、もとから住んでる人があまりにも閉鎖的で、村八分にされて馴染めないことがほとんどなのに、オレみたいな独身のおっさんが乗り込んでどうするんだってばよ?バカバカしい。
受け入れ体制も整っておらずに、ただただ住民税と実績が欲しいだけの、素人の政治家の企画だろ?ヘンなつながりがあるコンサルが入って鵜呑みにして、こういった人をバカにするのが最近多いんだよなぁ~。
···でも、書いてる内容はなかなかおいしい。まぁ、どんないやらしい手口か知るためにおバカなサイトを覗くだけ覗いてみるか。SNSで晒すのもありだな!
···今思うと、これがいけなかった。
スマホでコードを読み込むと···!気づいたらここにいた。どう思う!?
···そう。そして今に至っている。
「大丈夫かな〜?落ち着いた~?」
目の前にはチラシを配っていた変な格好の子がいるんだよ。こいつが犯人か!?
「聞きたいことがあるんだけど?」
「イイよ~!何でも聞いてね〜!時間はたっぷりあるからね~!」
「まず、ここはどこだ?」
「さっきから言ってるじゃない?神々の世界だよ」
「どうやってオレは来たんだ?」
「チラシにあった『神々の世界へのアクセス用コード』を読み込んでくれたんでしょ?それで自動転送したんだよ!あれはそういう仕掛け!」
「ちょっと待て!?だったらチラシ受け取って、オレみたいに興味本位でアクセスする奴らが他にもいるだろ!?なんでオレだけなんだよ!?」
「それはキミが『神になる素質』があるからだね~。受け取ってくれる人は素質があるんだよ。逆にない人はボクすら見えてないんだよ」
「罵声浴びせ倒すヤツもいたじゃねーかよ!?」
「あ〜、あの人は以前説明したら逃げられたからね~。『またやってんのか!?いい加減にしろ!!』って怒られちゃったね~。あの人も神の素質あるんだけどなぁ~」
「それにしたって、オレが神になるだって!?どういうことだ!?」
「チラシに書いてたでしょ?『空家が多い』って。神々の世界では、作られた世界を『家』って表現するんだよ~」
「って事は、空家ってのは神がいない世界って事か?」
「そうだよ〜!もともと別の神が作った世界なんだけど、夜逃げ···、ゲフンゲフン!いきなり神が行方不明になっちゃって、崩壊しかけてる世界が多いんだよ〜!」
「···今、夜逃げって言ったな?」
「気のせいでしょ?というわけで、ボクと契約して神様になってよ!」
「だが断る!文言からして危なすぎるわ!要するに、もともといた神がさじ投げた世界の神になるってことだろ!?問題物件じゃないか!?少なくとも新規の世界創造じゃないのが気に食わん!」
「『新築』希望かぁ〜。残念だけど、空いてる
「なんだか現代日本のような事が神様の世界でも起きてるのかぁ~。ファンタジー感ないなぁ~。···もしかして、在宅ワークってのは?」
「神様の業務として、世界を発展させることだよ!いつでも好きな時に世界を覗いて、時には神託を下し、時には神の力でいろんな事を起こせるよ!ただ、ポイント制だからやれることに制限あるけどね!」
「···断って帰りたいんだけど?」
「···えっ?帰る?···どうやって?」
「···は?···えっ!?もしかして、帰れないのか!?」
「帰れないよ。地球の神から『人口多いから連れてってイイよ!どうぞどうぞ!』って事で来てもらったからね」
「はぁっ!?マ、マジかぁ~···。って!?これって拉致だろー!!誘拐だぞーー!?」
「そんな事ないよ?『神隠し』ってのがキミの世界にもあるじゃない。あれもボク以外のナビが、素質ある神を連れてったっていうことなんだからヘーきヘーき!」
「···もう、どうしようもないのかぁ~」
「ささ!じゃあ、神様になって過ごしやすい世界を作ろうね!ある程度良くなったらその世界で住めるから!そうそう、ボクは世界創世のナビゲータなんだ。キミの名は?」
「江口 玲央(えぐち れお)···」
「じゃあ···、エレくんで!」
「···おい!?気安くあだ名をつけるな!」
「ははは!じゃあ、ボクはナビくんって呼んでもらったらイイよ!これから素晴らしい世界を創ろうね~!」
これが、ナビくんとの初めての出会いだったんだよ。これから···、とんでもなくクソゲーな世界創造をしなくてはならないと思うと···、気が重いわぁ〜。
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