第22章 夏祭りの魔法

 真夏の日差しが村を包む季節となった。ふわもこ村では、毎年恒例の夏祭りの準備が始まっていた。ミアは、今年の祭りを特別なものにしたいと考えていた。


「モフモフ、今年の夏祭りでは、みんなで作る大きな魔法を披露しようと思うの」


 モフモフは、涼しい床に寝そべりながら答えた。


「へぇ、どんな魔法を考えているの?」


 ミアは目を輝かせて説明した。


「村人一人一人の小さな魔法を集めて、大きな幸せの花火を打ち上げるの」


 祭りの準備が本格化する中、ミアは村人たちに呼びかけた。


「みなさん、今年の夏祭りでは特別な花火を打ち上げます。それには、皆さん一人一人の魔法が必要なんです」


 村人たちは興味津々の表情で集まってきた。


「私たちにも魔法が使えるの?」

「どうすればいいの?」


 ミアは優しく微笑んで答えた。


「はい、誰もが心の中に小さな魔法を持っています。それを見つけ出すお手伝いをしますね」


 それから数週間、ミアは村人たちと個別に会い、それぞれの中に眠る魔法の力を引き出していった。


 リリーは、花の魔法を磨いた。


「私の魔法で、花火がより鮮やかに咲くといいな」


 村の大工さんは、木の温もりを伝える魔法を見出した。


「この魔法で、みんなの心が温かくなれば良いねぇ」


 子どもたちは、純粋な願いを込める魔法を学んだ。


「僕の願い、きっと叶うよね?」


 ミアは一人一人の魔法を、小さな光の玉に封じ込めていった。


 祭りの当日、村は賑わいに包まれた。屋台が立ち並び、笑顔があふれている。夜になり、いよいよ花火の時間が近づいてきた。


 ミアは村人たちを広場に集めた。


「さあ、みなさんの魔法を集めましょう」


 村人たちが持ち寄った光の玉を、ミアは大きな透明な球体の中に入れていく。球体は、様々な色の光で満たされていった。


「みんなの想いが、ここに詰まっています。これを、夜空に解き放ちましょう」


 ミアが呪文を唱えると、球体がゆっくりと空に浮かび上がっていった。村人たちは息を呑んで見守る。


 球体が夜空高く昇ったところで、ミアは最後の魔法をかけた。


「みんなの幸せよ、花開け!」


 その瞬間、球体が大きく弾けた。無数の光の粒が、夜空いっぱいに広がっていく。それは通常の花火とは比べものにならないほど美しく、そして温かみのある光景だった。


 花火は様々な形に変化していく。リリーの魔法で花が咲き誇り、大工さんの魔法で木々が育つ。子どもたちの願いは星となって輝いた。


 村人たちは歓声を上げ、中には感動で涙ぐむ人もいた。


「こんな美しいものを見たのは初めてだよ」

「心が温かくなるね」

「私たちみんなの魔法が、こんなに素敵なものを作り出せるなんて」


 花火は長い時間、夜空を彩り続けた。やがて光が消えていく頃、不思議なことが起こった。光の粒が、ゆっくりと地上に降り注ぎ始めたのだ。


 その光に触れた人々の体が、ほんのりと輝き始める。


「これは……」


 ミアは驚きながらも、優しく説明した。


「みんなの幸せの魔法が、一人一人に戻ってきたのね。これからは、この光があなたたちの中で輝き続けるわ」


 祭りが終わった後も、村人たちの目には喜びの光が宿り続けていた。その夜、ミアは満足感に包まれながら、日記にこう書いた。


「今日、私たちの村は一つになった。みんなの小さな魔法が集まれば、こんなにも大きな奇跡を起こせるのだと、改めて感じた夜だった」


 窓の外では、祭りの余韻なのか、まだほのかな光が漂っているように見えた。ふわもこ村の夏の夜は、魔法と希望に満ちていた。

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