第2章 花の魔法と新しい友達
翌朝、ミアは柔らかな陽光に包まれて目覚めた。窓から差し込む光は、都会のそれとは違い、優しく温かみがある。ベッドの横では、モフモフがくるくると丸まって眠っていた。
「おはよう、モフモフ」
ミアが声をかけると、モフモフはゆっくりと目を開けた。
「おはよう、ミア。よく眠れた?」
「ええ、とても。この村の空気のせいか、心地よく眠れたわ」
ミアは伸びをしながら、窓の外を眺めた。朝霧に包まれた村の風景が、まるで絵画のように美しい。
「今日は村を案内してあげるよ。でもその前に、朝ごはんを食べよう」
モフモフの提案に頷き、ミアはキッチンに向かった。冷蔵庫を開けると、新鮮な卵や野菜、牛乳が用意されていた。
「わぁ、嬉しい! でも、誰が用意してくれたのかしら?」
「きっと村の人たちだよ。みんな優しいんだ」
モフモフの言葉に、ミアは温かい気持ちになった。
朝食を済ませ、ミアとモフモフは村の散策に出かけた。道を歩いていると、昨日会った中年の女性が声をかけてきた。
「おはよう、ミアちゃん。モモおばあちゃんに会えた?」
「あ、おはようございます。いえ、まだです……」
「そう。じゃあ、今日はリリーの花屋さんに行ってみたら? きっと仲良くなれると思うわ」
女性に教えられた道を進むと、色とりどりの花々に囲まれた可愛らしい店が見えてきた。看板には「リリーの花園」と書かれている。
店の中に入ると、華やかな香りが鼻腔をくすぐった。棚には様々な種類の花が並び、それぞれが魔法のように輝いているように見える。
「いらっしゃいませ!」
明るい声と共に、若い女性が姿を現した。淡いピンクの髪を後ろで結び、エプロンを身につけている。
「あら、新しい人? 私はリリー。この花屋の主人よ」
「はじめまして。ミアです。昨日、この村に来たばかりで……」
「ようこそ、ふわもこ村へ! きっと素敵な時間が過ごせると思うわ」
リリーの笑顔は、まるで花のように明るく華やかだった。
「ねぇ、良かったら一緒に花摘みに行かない? 今日はちょうどいい天気だし」
リリーの誘いに、ミアは喜んで頷いた。
村はずれの丘に着くと、そこには一面に広がる花畑が広がっていた。風に揺られる花々は、まるで虹色の波のよう。ミアは思わず息を呑んだ。
「綺麗……!」
「でしょう? この花畑は、私たち村人みんなで大切に育てているの」
リリーは嬉しそうに語る。そして、不思議なことが起こった。リリーが手をかざすと、花々が優しく光り始めたのだ。
「わぁ……これは?」
「花の魔法よ。私の特技なの」
リリーの手から溢れる柔らかな光が、花々を包み込む。するとそれぞれの花が、より鮮やかに、より生き生きとしてくる。
「すごい……」
ミアは感嘆の声を上げた。リリーは微笑んで、ミアに花を摘む方法を教え始めた。
「こうやって、茎の根元からそっと摘むの。花の気持ちを感じながらね」
ミアは教わった通りに、慎重に花を摘んでいく。不思議なことに、花を摘むたびに心が落ち着いていくのを感じた。
しばらく花摘みを楽しんだ後、リリーが提案した。
「せっかく摘んだ花だから、お茶を作ってみない?」
「花のお茶? 作れるんですか?」
「ええ、私の得意料理の一つよ。一緒に作りましょう」
リリーの家に戻り、二人で花のお茶作りに挑戦することに。リリーは丁寧に手順を教えてくれた。
「まず、花びらを丁寧に洗って……そうそう、その調子よ。次に、お湯を沸かして……」
ミアは集中して作業を進める。花びらの香りが立ち込め、部屋全体が甘い香りに包まれた。
完成したお茶を注ぐと、淡いピンク色の液体が優雅に湯飲みを満たしていく。
「さぁ、できたわ。一緒に飲みましょう」
二人で乾杯し、そっとお茶を口に運んだ。
「わぁ……美味しい!」
花の香りと甘みが口いっぱいに広がり、体の中から温かくなっていく。それだけでなく、心まで癒されていくような不思議な感覚。
「ね、美味しいでしょう? これが花の魔法のパワーよ」
リリーが嬉しそうに言う。ミアは自分の作ったお茶を見つめ、なにか特別なものを感じた。
「リリー、このお茶……なんだか不思議な感じがするの」
「そう? ……あら、本当ね。ミアちゃん、もしかしたらあなたにも魔法の才能があるかもしれないわ」
「え? 私に?」
「ええ。このお茶、普通以上に癒しの効果がありそうよ。きっと、あなたの中に眠っている力が影響しているのね」
ミアは驚きと喜びが入り混じった表情で、自分の手を見つめた。まさか自分に魔法の力が……?
「これからが楽しみね。一緒にもっといろんなこと、挑戦しましょう!」
リリーの言葉に、ミアは頷いた。新しい世界での、新しい可能性。それは、とてもワクワクするものだった。
窓の外では、夕暮れの柔らかな光が花畑を優しく照らしている。ミアは心地よい疲れと共に、充実感に満たされていた。
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