ドラゴンゾンビ

 腐臭を撒き散らす巨大な生物

 見上げるほどの高さがある

 この腐った臭いは肉が腐っている証拠

 しかし、見た目は腐っているようには見えない


 ……鱗で見えないけど内部の肉が腐ってるのかな。傷は見た所見えない


 まだ後ろは確認出来ていないが見た所大きな傷は見えない

 ドラゴンが死んだ原因は外傷による物では無いと言う可能性が考えられる


 ……寿命か何かで無傷の状態で死んだのかな。厄介過ぎる


 傷を負っていれば鱗が剥がれていたり肉が剥き出しになっていた可能性があっただろう

 そうなればその傷を起点に傷を広げたり内部へ攻撃を入れたりと出来る

 しかし、外傷以外の死因だと希望が薄い

 黒いモヤに包まれているが魚か甲殻類か何かのような硬そうな鱗がチラッと見える


 ……あれは硬そうだなぁ


「これがドラゴン……」


 これでも本来のドラゴンより弱くなっていると聞いているが威圧感が半端無い


「果たして勝てるのかな」


 対峙して勝てる気がしない

 実力差と言うよりは生物の越えられない壁を感じる


「人間って生物的にはそこまでだよねぇ〜。と言うか大き過ぎる。大体質量あるだけで強いからなぁ」


 体格差があり過ぎる

 正直逃げたいが今から逃げたところで逃げ切れる相手では無い

 逃がしてくれる気も無さそうに見える

 大剣を構える

 ドラゴンゾンビはジッとこちらを見ている


 ……硬いだろうし本気で……全力で


 呼吸を整えて自分の身体に意識を向ける

 細胞一つ一つを活性化させるように血流が手足の先までしっかり届くように

 そして力を込める

 大剣の耐久を考えずに力を込める

 強い相手なのは確定、なら最初から本気で行く


 砕けない大剣と言うのは相手の攻撃で砕けても困るが何よりも自身の力で壊れては困るから出した注文

 普段は無意識で制限されている限界を意識的に超える

 銀髪に血のような赤黒い色が混じる


「これでもまだ勝てるとは断言難しいけど良い勝負は出来るかな」


 ドラゴンゾンビを見る

 まだ動かないで様子を伺っている

 警戒してくれているのか分からないがお陰で準備は整った

 標的はこの1体、周りの雑魚に割く余裕は無い

 地を蹴る、力を込めるが深くは踏み込まず浅く素早く移動する


 ……飛ばれたら厄介、先あの翼


 ジャンプして近くに居た魔物の頭を踏んで飛び上がる

 そして背中に飛び乗る

 腐臭がするが気にせずに翼の根元まで向かって大剣を振るう

 背中に乗られたことに気付いたドラゴンゾンビは抵抗する

 振り払おうと身体を横に揺らすが鱗にしがみついて落ちないように耐える

 一度大剣を解除して拳を握る

 腕全体に力を込めて鱗目掛けてぶん殴る


 物凄い音がしたが鱗に傷は付かない


 ……腕だけとはいえ硬いな。硬さはドラゴンと同じ?


 衝撃が走ったのかドラゴンゾンビは叫ぶ

 そして振り払いが無理だと分かると別の行動を取ってくる


「止まった?」


 急に静止する

 怪しいがチャンスと思い大剣を起動してから翼の根元に叩き付ける

 切れなかったが浅くない傷が付く


 ……もう数発で行けそう、何か来る


 本能で察知してその場から飛び退く

 すると飛び退く前に居た場所に無数の骨のような何かが棘のように飛び出ている

 あのまま居れば貫かれていただろう


「骨? 片翼だけでも斬りたいのに」


 空を飛ばれると私には攻撃の手段がほぼ無い

 飛んでる相手に大剣投げはそこまで当てられる自信が無い

 少し無理をしてでも片翼を切り裂く必要がある

 突っ込む

 鱗の隙間から骨が出てくる

 回避して蹴りを叩き込む

 骨にヒビが入る、後ろから襲いかかってきた骨を大剣で受け切る

 弾いてから力を込めて振るった大剣で骨を断つ


「骨はそこまで硬くない。速度も充分対応出来る」


 戦いながら攻撃パターンと様々な情報を集める

 出てきた無数の骨を回避して大剣で真っ二つに切り裂いて進む

 翼の根本に着き一瞬動きを止めてしっかりと力を込める

 硬い翼を斬るにはしっかりと振るわないと難しいとさっきの一撃で理解した

 横薙ぎを振るう

 浅くない傷を付けるが切り落とすまでは行かない

 踏み込んで押し切ろうと試みる


「はぁぁぁぁぁ!! ッ!?」


 しかし、それを許さないかのように骨が襲いかかってくる

 大剣を引いて骨の対応をする

 大剣で防いで弾く、横からの攻撃を避けて蹴りを叩き込んで一旦離れる

 そして突っ込んで骨を切り裂いて傷を付けた場所に蹴りを叩き込む

 ドラゴンゾンビは叫び振り払おうと身体を揺らす

 丁度攻撃をしていたせいで体勢を大きく崩して投げ出される


「不味い」


 すぐに焦らず冷静に地面を見て着地地点を確認する


 ……着地地点に魔物無し


 ちゃんと着地をしないと追撃に対応が出来ない

 地面にしっかりと着地してすぐに移動する


 邪魔な魔物を切り裂いて一旦距離を取る


「仕切り直し……だけど次はもっと警戒してくるはず、傷を負わせたし空飛びづらくなってればいいけど」


 私は集中して翼へ攻撃を叩き込んでいる

 狙いはドラゴンゾンビも分かっているだろうから次も同じ手は通じづらい


 ドラゴンゾンビは前足を上げて踏み付けてくる

 巨大な生物が足を叩き付けた事で地面が大きく揺れる

 私は勿論周囲の魔物もその揺れで体勢を崩す


「凄い揺れ……厄介」


 空を飛べない私と言うか人間の殆どは地面に接しながら行動しないとならない

 その足場が揺らされると思うように動けない

 体勢を崩したまま地面を蹴り頭から横に飛ぶ

 何とか受身を取ってすぐに立ち上がり移動する

 踏み潰そうと前足で襲いかかって来る


 ……どうやって接近するかな


 前足による攻撃は接近を阻む為だろう

 私も暴れている相手に突っ込む程、無謀では無い

 考えているとバックを持っていた事を思い出す


「あっ……バック、そうだ!」


 バックから小型の爆弾を取り出す

 クレマに用意して貰っていた爆弾

 威力抑え目の爆弾、ダメージは無いが直撃すれば衝撃は大きい

 振り上げた足に命中して爆発する、大きな音がする

 想定より大きな音でビックリする

 衝撃で僅かにズレた前足が近くの魔物を踏み潰す


「爆弾は後4つ、煙玉も4つ、これは慎重に使わないと」


 クレマはドラゴンゾンビを刺激しないように周りの魔物を仕留めている

 クレマのお陰でだいぶ余裕持って動けている


「次はどうやって攻めようかな」

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