棄権者はルーヴェント

追求者

ベアトゥースの人生の分岐点

 とある王国の王都で剣術大会が行われた。本来優勝候補だった「傭兵団長ルーヴェント」は一回戦終了時に急用が入り棄権。どこからともなく現れた「美青年剣士ベアトゥース」が優勝した。美青年剣士ベアトゥースの剣さばきは観客を魅了した。


 大会が終わり、王都の広場は歓声と祝福の声で満ちていた。ベアトゥースは優勝の栄誉を受け、王から直接賞賛の言葉を受けた。王は彼の剣術に感銘を受け、彼を王国の騎士団に迎え入れることを提案した。


「ベアトゥース、君の剣術は見事だった。ぜひ我が騎士団に加わり、王国のためにその力を貸してほしい」


 と王は言った。


 ベアトゥースは後、静かに頷いた。


「光栄です、陛下。私の剣は王国のために振るわれるべきです。」


 その夜、王都では盛大な祝賀会が開かれた。ベアトゥースは新たな仲間たちと共に祝杯をあげ、彼の名は一夜にして王都中に広まった。しかし、彼の心には一つの疑問が残っていた。なぜルーヴェントが急用で棄権したのか、そしてその急用とは何だったのか。


 数日後、ベアトゥースは騎士団の訓練に参加し始めた。彼の技術はすぐに他の騎士たちにも認められ、彼は瞬く間に騎士団の中心人物となった。しかし、彼の心の中には常にルーヴェントの影があった。


 ある日、ベアトゥースは訓練場でルーヴェントと再会した。ルーヴェントは険しい表情をしており、その目には何か深い決意が宿っていた。


「ベアトゥース、君に話がある」


 とルーヴェントは言った。


「あの日、私は王国の秘密を守るために動いていた。君にその真実を知ってもらいたい。」


 ベアトゥースは驚きながらも、ルーヴェントの話を聞くことにした。彼らは訓練場を離れ、静かな場所で話を始めた。


「実は、王国には古代の秘宝が隠されている。その秘宝を狙う者たちが現れたため、私は急遽その防衛に当たっていたのだ」


 とルーヴェントは語った。


 しかし、ベアトゥースはその話に違和感を覚えた。ルーヴェントの目には冷酷な光が宿っており、その言葉には何か隠された意図があるように感じられた。


「ルーヴェント、本当にそれだけが理由なのか?」


 ベアトゥースは問いかけた。


 ルーヴェントは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷笑を浮かべた。


「さすがだな、ベアトゥース。実は、私はその秘宝を手に入れるために動いていたのだ。」


 ベアトゥースは驚愕し、剣を構えた。


「それならば、君を止めるために戦うしかない。」


 ルーヴェントも剣を抜き、二人の間に緊張が走った。


「来い、ベアトゥース。君の剣術がどれほどのものか、確かめてやる。」


 こうして、ベアトゥースとルーヴェントの戦いが始まった。二人の剣が交錯し、火花が散る。ベアトゥースはルーヴェントの冷酷な計画を阻止するため、全力で戦った。


 …が、ルーヴェントの勝利で戦いが終わった。


 王国の古代の秘宝が盗まれるとベアトゥースが思ったそのとき。突如、王やほかの兵士たちが物陰から現れた。ベアトゥースは驚き、後ずさりした。


「何故ここに…?」


 ベアトゥースは困惑した表情で王を見つめた。


 王は冷静な表情でベアトゥースに近づき、静かに言った。


 「ベアトゥース、ルーヴェントがどうしても君と戦いたいと言うから、その願いを叶えてあげたのだ。」


 ベアトゥースは驚きを隠せずにいた。


「これはどういうことですか?私を試していたのですか?」


 王は頷き、続けた。


「半分はそうだ。君の真意を確かめるために、ルーヴェントとの戦いを見守っていた。君が王国のために戦うのかを見極めるために。」


 ルーヴェントは剣を下ろし、ベアトゥースにもう半分の理由を告げた。


「君は剣術大会で優勝すると誰もが予想した私と戦うことなく優勝してしまった。だからこそ、自分の実力に自信が持てなかった...そうだろう?君の普段の行動を見てるとそう思ったのさ。だから君と戦えば、君の心もすっきりするだろうとおもってね。」


「陛下、ルーヴェントさん、ありがとうございます。私のことを気にかけてくださって。」


 とベアトゥースは感謝の意を示した。


 王は微笑み、ベアトゥースの肩に手を置いた。


「君の勇気と忠誠心に感謝する。これからも王国のために力を尽くしてほしい。」


 ベアトゥースは力強く頷いた。「もちろんです、陛下。私の剣は王国のために振るわれるべきです。」


 こうして、ベアトゥースは後に王国の守護者と呼ばれるようになった。しかし、ベアトゥースにはまた新たな悩みができてしまった。


「古代の秘宝はあるのか?」

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