037 ~後手になってゴテゴテ~

自宅の敷地内には、よく猫の落とし物がある。


敷地内とは言っても、身内の二軒を含む共同敷地だ。


一応の境界はあるけれど、

お互いがお互いに関係し合い、そして遠慮し合い生活している。


そのちょうどいい境目のところに、よく猫の落とし物がある。



いつも雨に打たれて自然消滅するのを待ったり、

木の枝を使って草むらに放ったりする。


だから今回もそのようにしようと思っていたところ、

近所に住むお義父さんがトングを買ってきて処理していた。


「くせぇからよ。それに踏んだら大変だろ。」

「あぁ! すみません、ありがとうございます!」


ゴミ出しの時に、実は僕もその落とし物の存在には気づいていた。

どうにかしようとは思っていた。


先を越されてしまった以上は、すでに後手だ。

こちらが何を言ってももう言い訳のように聞かれてしまう。


文字通り、ゴテゴテだ。


その時のやりきれなさは僕もわかってはいる。

だから自分ではない人に何かを伝える時は、

すでに気づいていることなのではないかと相手に確認するようにしている。



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