@hima4200

第1話

仕事帰りふと見上げた際、夜空に

一際大きいうすきばた色の満月が広がっていた


夏が過ぎ、秋の香りが次節の訪れを仄めかす

中で、私は幼き頃祖父の膝の上で見た月を

不意に思い出していた。


寡黙でぶっきらぼうな人だったので

他の兄弟たちは避けていた様だが

幼い頃の私は、特に理由はなくそんな祖父が

好きで、お餅や甘いお菓子をせびっては

よく縁側でお月見をした。


灯台下暗しという言葉がある

身近なことにはかえって気が付かないことの

例えであるが


きっと私が幼き日やこの言葉が脳裏を

過ったのもそういうことだろう。


「家に帰ったら久々実家に電話してみるか」


パンプスが夜道にコツコツと音を立て

家路を急いだ。

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