転生水竜の異世界リゾート島くらし~自分だけのリゾート島を開拓しながら逃亡貴族の魔術師や、無邪気な島エルフ達に寿司、水着、マリンスポーツを布教したり道具をクラフトしてのんびりスローライフする話〜

しば犬部隊

私は海で暮らす事にした

第1話 沖縄に行きたかった

「悪い、間違えた。お前ほんとは死ぬはずじゃなかったわ」


「マジか」


 真っ白な空間。

 雲の座布団にあぐらをかく白髪の青年が目の前にいた。


 私はスーツ姿のまま、思考を回す。

 さて、どうしてこんな事になったのだろうか。


 まず、クソ上司の顔に退職届を投げつけた。

 

 コイツが炎上させた仕事を2週間かけて鎮火した後、私の超過残業時間についてお気持ち表明武勇伝付きお説教を2時間かまされたのが私の背中を押した。


 こんな無能が自分より良い給料を貰い、なおかつこんな無能が上に上がる組織が急にアホらしくなったのだ。


 帰路の途中。

 そうだ、沖縄行こうと飛行機の予約でスマホを眺めた次の瞬間、私はここにいた。


 これ、まさか。この唐突さは、アレか?

 何度もラノベで読んだ……あの……。



「おい、まさか私は死んだのか?」


「あー、そう、すまん。事故だわ、事故。普通に飲酒運転のスポーツカーに狩られたな」


「この令和の世にか。いつだってバカはバカのままだな。それで、あんたは神で、なんかの不手際があった訳だ」


「お? お前、日本人か? ああ、だったら話は早い、転生だ、転生」


「ほうほう、もしかして……間違えて殺してしまったお詫びに?」


「ああ、良かった。なろう系とか読むタイプの社会人か。じゃあ話はシンプルだな。そうそう、チートだ、チート。いや、マジにすまんかった。チート与えた上で転生させるわ」


悪くないな。

天涯孤独なうえに無職になったばかりだ。

びっくりするほど自分の人生に執着がない。

ほんと仕事だけしかしてなかったしな。


朝の4時に起きて次の日の深夜26時まで仕事してたら、それはもう、人間じゃなくて別の何かだろ。


よし、神様もこう言ってくれているし、前向きに転生しよう。

後悔があるとしたら、沖縄リゾート旅行に行けれなかったくらいだ。

はあ……行きたかったな。


「さて、お前に渡す特典(チート)だが……」


神様が話し出す。

ふむ、交渉するならここだな。


「さらに?」


「あ?」


「チートについて、さらに?」


神様が少し渋い顔をして、まあ、と頷く。


「……チートも選ばせてやる」


「今ならそれに加えて?」


「……2つまでならいいぞ」


「……もう一声!!」


「………あー。じゃあスキルツリーもやるよ、好きだろ? 自分でスキル選んだらする奴」


「……沖縄、行きたかったな……」


「分かった! 転生する場所も選ばしたるから!」


「その言葉が聞きたかった」


 良い。

 クソ社畜人生で得たガバガバ交渉術が役に立ったぞ。


「なんか上手いこと言いくるめられた気もするが……まあいい。じゃあ、ほら、どれにする? 転生先を選びな」



 神に渡されたのは数冊のパンフレット。


【やっぱり王道! 勇者!! 選ばれし力と託された運命と共に使命に挑もう】


 ファンタジーな景色と派手な魔法を放つ姿。

 中世の街並みに巨大な塔や、大きな門が聳えている。

 勇者か……責任ありそうだから却下。

 もう他人の為に働くのはごめんだ。


【探索者! 現代に現れた未知の領域に挑み、大金を手にしよう】


 現代の街並みにモンスターがいて、それを手斧を持った男が狩ろうとしている。

 ……なんだ? この男、首にエラがあるのか?

 怪物を狩ろうとして自分が怪物になったら本末転倒だろう、怖いから却下。


【宇宙行こう! 人類の黄金時代を】


 宇宙空間に戦艦やロボットが浮いている。

 宇宙か、惹かれない事もないが戦うのは面倒だ。

 それに乗り物酔いすると面倒なので却下。


 どれもピンとくるものがないな……。


「む?」


 異世界ファンタジーのパンフレットにもう一枚、薄い、蒼一色のパンフレットが挟まれてある。


 私がそれを広げるとーー。



【異世界ファンタジー"海スタート" ※転生に際して必ず水中呼吸系の特典を選んで転生してください】



 蒼いパンフレットには、海の光景。

 それもエメラルドかつ、透明。

 白い砂浜、避けるような青空、色とりどりの珊瑚礁。


 海、沖縄、南国、リゾート……!!


 リゾート暮らし!! 最高じゃないか!


沖縄旅行に行けれなかった分、余りある素晴らしい転生だ!


「これだ……! これにする!」



「お? おー、中々渋いの見つけたな。これ、本当の海スタートだぜ? マジで360°、海しかない感じだが?」


「問題ない。チート……特典も2つ選ばしてくれるのだろう?」


「お、おー……ほら、そこのカードから2枚選びな」


 神が指を鳴らすと、目の前にたくさんのトランプみたいなカードが現れる。


 ARのタッチ画面みたいだ。


【無敵】【英雄】【運命操作】【再生】【腑分け】【狩人の目覚め】【遺物の王】【神性】【魔法辞典】etc……


 凄そうなものばかりだが……。

 もうしばらく社会と関わりたくない。

 上司や会社の事を忘れて新しい人生に集中したいのだが……



「あー……お前も苦労してんだな。じゃあ、こんなのなんかどうだ?」


「これ、は……」


 神が投げてよこしたカードを確認する。

 そこには――。


【竜化】

【もう人間社会に関わりたくない貴方に……今なら不老と人間化のおまけ付き】



―――――――――――――――

あとがき


海に行けない忙しい現代人の為の小説です。


夏の間は毎日更新目指します。


フォローして下の☆評価入れて頂けると非常に助かります。

その分、癒しの時間を提供する事でお返しいたします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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