第12話 リンとともに
「皆の者!頭か首を狙うのじゃ!奴らには生も死もない。体を傷つけたとて意味はない。また襲いかかってくるぞ!」
少しずつ近いづいて来たゾンビたちがもう目の前まで迫っている。腐った体を持ち目の焦点が合っていないのに、僕たちを見て僕たちを目指しているのがわかる。僕や村人たちの顔がこわばる。その顔を見てリンが響くように叫んだ。
「槍を構えろ!ゾンビどもは儂と仁が倒す。皆は柵を登られないようにすることだけ考えるのじゃ!」
リンの勇ましい声が響く。そしてついに迫ってきたゾンビが正面の柵がない部分から押し寄せてくる。
「いくぞぉぉぉぉ!」
そこにリンが低い姿勢から突っ込む。そして拳銃の弾丸のように駆けていき、槍を払う。0から1の動きが速いせいか、一瞬目で追いきれないくらいだ。そして一振りで二人分の首が飛び、二振りでもう二人分飛ぶ。その動きには鬼神のような力強さを感じる。彼女は神を名乗っていたが、まさに神のごとき強さである。そしてそれを見た村人たちの闘志に火がつき、彼らのリーダー格であろう男は叫ぶ。
「我らにはリン様がいる!我らされ守りきれば、決して負けんぞ!」
「「「うぉぉおお!」」」
男たちも這い上がろうとするゾンビたちを決して近づけさせまいと槍を握る。今ここにゾンビの首ともに戦いの
戦いが始まり、10分くらいたっただろうか。動きは遅いが、ゾンビの勢いは今もまだ続いている。だが作戦は成功している。村人たちはゾンビを押しとどめており、正面から押し寄せるゾンビにはリンが存分に槍を振るい暴れている。ときおり武器がダメになる者もいるが、女性のサポートで代わりの物を受け取っている。
そして僕はまだリンの後ろで待機をしている。同じ場所に二人同時で戦うと槍が存分に振れないためだ。リンの合図で役目を交代する。そのときまでリンの動きを観察するのだ。ただ僕の出番はもうすぐだとわかる。なぜならリンの動きが鈍くなっているのからだ。体力的なものか神性力の消費が激しいのかは知らないが、彼女は持久力に乏しいのだろう。村人たちも徐々に疲れて歯を食いしばっているが人が増えている。
そしてとうとうリンから合図が来る。
「仁、出番だぞ!交代じゃ。儂はしばらく休む。じゃが手本は見せた。それにそなたの肉体は既に神性力により強化されておる。あとは肉体の限り、神性力の限り、槍を振るうだけじゃ!」
リンが叫びながら槍を振った勢いでジャンプして、僕のほうへ着地する。僕はこのとき力の限り戦うことだけを考えて踏み出した。そして気合を入れるように叫ぶ。
「はぁぁあああ!」
そして目の間に迫ってくるゾンビの首めがけて槍を払う。ゾンビの体は腐っている。ゆえに簡単に首が切れる。だが僕はその首を切った感触を味わうと同時にゾンビの発する臭いに驚く。
「くっさ!」
やはりゾンビは腐っている。腐敗臭がする。後ろにいたときもうすうす臭っていたが、目の前に来るとより直接的だ。我慢ができず、叫ぶ。
「リン!この臭いどうにかならない?」
「皆同じ思いをしておる。我慢しろ!気にするな!お前の鼻はもう死んでおる」
どこかの世界のケン〇ロウのような言い方で無茶を言うリン。仕方ないので口呼吸で耐え、槍に集中する。僕は父の動きを思い出しリンの動きを観察して、マネをするように槍を振るった。体が神性力によって強化されているおかげか、基礎的なことしか習っていないのに達人のように動けている。ゾンビの動きが遅いのもあり、的確に首を刎ね続けていった。
それを見てまた村人たちが声を上げる。
「おお!リン様のお連れの方も尋常ではない」
「守れば勝てる!今しばらく耐えるぞ!」
「「「うぉぉおお!」」」
「ふふ。やればできると思っておったぞ。仁」
村人の声を聞いてリンが嬉しそうに頷いた。僕とリンの存在がこの戦いにおける彼らの精神的な支柱となっているのだろう。僕は彼らの声を聞いて踏ん張るように槍を握り直した。そして僕は今までこなしてきた鍛錬の全てを思い出した。何度も繰り返してきた突きや払いの動作。それらを自然と湧き上がってくる負けたくないという感情とともにゾンビにぶつけたのだった
だがしばらくすると、疲れを感じ始めた。息切れをしてしまう。やはりずっと動きまわり、集中して何十回も槍を振るのは大変なようだ。僕はこの戦いが初陣であるため、精神的な疲れも大きい。僕を見ていたリンもそれを感じたのか、横に並び声をかけてきた。
「仁、ここからは一緒に戦うぞ。儂も完全に回復したわけでないが、村の男と同じくらいには動ける。今ここを凌げば勝てる。勝利は目前じゃ!」
夜で暗いため正確には見えない。しかし列を成していたゾンビたちに今はもう後続はいないように見える。ここを耐えれば勝てる!ここを耐えれば勝てる!そう自分に言い聞かせた。
しかし後続がいないだけでゾンビの勢いが衰えたわけではない。肩で息をしている僕と一般人程度の身体能力しかないリン。僕とリンは覚悟を決めて敵をにらみつけた。そして僕とリンは同時に構え、同時に踏み出し、同時に気合を入れた。
「「はぁぁぁぁぁぁあああ!!」」
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