第4話 少女の正体についてとか

 彼女はつまらなそうにそう言った。僕の予想に反して怒らず、見た目に反して大人っぽく、機嫌の良さに反して冷たく言った。


「儂は事実を否定したりはせん。儂は確かに少女のように見える。少女そのものじゃ。だがそなたは間違っておる。神を見た目で判断することほど愚かなことはない。それにそなたの言うオーラは今は漏れないようにしておるだけのこと」


 なるほど確かに神は人ではない。人とは生まれも育ちも違うのである。だから見た目で判断してはならないのだろう。正論である。


「ですがそれであなたが神だという証明にはなりません。確かにオーラのような常人でも悪人でも出せないようなものが出せる。それは認めましょう。でもサ〇ヤ人だってオーラみたいなものは出せます!」

「ふふ、確かにな。その理論であれば、その通りじゃ。そなたの言うオーラを出せるからそいつは神であるという理屈は成り立たん。だが忘れておらぬか?儂はお前を車から助けてやったのじゃぞ」


 この自称神は以外と話がわかる。まさかサ〇ヤ人を知っておるとは。しかし車から助けられたことが神の証明になるのだろうか。


 「わかっておらぬな。考えてもみよ。あのとき、横断歩道の向こう側にいた儂がなぜ間に合ったと思っておる?どうやってそなたに突っ込んでいく車よりも速く、そなたを捕まえたと思っておるのじゃ?」


 なるほど。確かにそれはおかしい。なぜなら彼女は僕より背が低く、歩幅も小さい少女なのだ。人間であればまず間に合わない。となればこの少女は神かどうかはともかく、普通の人間ではないということだ。納得である。それに自分がこの森の中を歩いているという事実もおかしい。


「理解できました。それと遅くなりましたが、あのとき車から助けていただいてありがとうございました」

「よい。それでそなたは他に何か聞きたいことはないのか?」

「あります。ではーー」


 そうして僕は再度歩き出した彼女についていきながら色々質問をした。


 それによるとどうやらここは異世界で間違いないらしい。僕が飲み込まれたブラックホールのようなものは、この世界に繋がっていたようだ。どうやらこの少女は僕を車から助けるために、緊急避難することを目的に僕を連れ込んだようである。そして元の世界には簡単に帰れないのだそう。


 また僕たちがいる場所は、太陽の神が影響力を持っている国の辺境にある森の中らしい。太陽の神とはなんだろうか。いまいち理解できない。


 そして僕たちは最寄りの村へ向かっているのだとか。当てもなく歩いているわけではなくて安心した。僕はもちろんのこと彼女もバックのようなものは背負っていない。僕一人だけだった場合は間違いなく力尽きるだろう。


「仁。村へ着くのはおそらく明日の朝になる。少し行くと浅い洞窟がある。今日は暗くなる前にそこまで行くぞ。夜は冷えるから歩きながら焚火になりそう枝を拾っておけ」

「わかりました」


 彼女に返事をしながら歩く。今は頭も体もよく働かないため、彼女の歩幅がちょうどよく感じる。


 僕はまだまだ聞きたいことがあるため、質問を繰り返すのであった。オーラのこととか。オーラのこととか。

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