『結婚の条件』(6)

 魔獣界とは、希少種の魔獣のみが住む世界。

 そもそも人の姿に変身できる魔獣は希少種のみ。特別な事情がない限り、結婚するには懐妊を伴う事が絶対的な条件であった。全ては絶滅危惧種を存続させるためなのだ。

 それが異種族との結婚であっても例外ではない。イリアのように混血であっても、魔獣の血は薄れずに受け継がれるからだ。


 だが、それはイリアにとっては、かなりの無茶振りである。いやイリアとしては今すぐにでも身籠りたいのだが、相手はあの真面目でクールなレイトである。


「ちょっと待ってよ! その条件、ハードル高すぎない!?」

「そうでしょうか? これも魔獣界の掟なのです。王様と王妃様は難なくクリアされておりましたわ」

「パパとママ? あ、そう言えば……」


 イリアの父は魔獣で、母は悪魔。そして婚約中に、双子の『イリア王女』と『アディ王子』を身籠った。そしてイリアの双子の兄である、アディ王子とは……


「そう言えば、エメ姉はアディ兄と婚約中でしょ、もしかして、もう……」

「いやですわ、恥ずかしい」


 エメラは赤くなった頬を両手で覆って隠しながら微笑んだ。そんな彼女の胸元には、アディから贈られた青い宝石の婚約ペンダントが輝いている。

 魔獣界での婚約中とは、妊活中と同然。キザで手の早いアディの事だから、二人が結婚を迎える日は近いだろう。


(これは負けてらんないわね……アタシも、やってやる!!)


 勝手にエメラに対抗心を燃やすイリアであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る