その②
◇ ◇ ◇
「それじゃ、3日分出すのでちゃんと飲んでくださいね」
「わかってるよ。ちゃんと飲むから」
「当然です。ソフィーさん。わたしが来る前は自分で調薬してたんですか」
「薬師の特権だよね」
「わかってるとは思いますけど、解熱剤の使い過ぎは禁物です。体温が低くなり過ぎますからね」
「はぁい」
「今日は泊まらせてもらうのでなにかあったら呼んでください」
診察室から持ってきた調薬道具を片付けながら今夜は泊まると口にするサラちゃんに思わず「え?」と声が出てしまう私。いくら高熱があるといっても風邪如きで泊り込まれるのはさすがに気が引けます。
「ソフィーさん。いま『風邪如き』って思いましたよね」
「わかった?」
「村に来て半年近くなるんですよ。ソフィーさんの考えそうなことくらいわかるようになりますよ」
「ハハハ。そうだよね」
「今日は病人なんですから、薬師の言うことは聞いて下さい」
普段のちょっと気弱な彼女とは思えない珍しく強気……というか薬師としてやるべき仕事をこなしているサラちゃん。
(なんだかんだもう半年経つんだよね)
最初は私が師匠で良いのかなと思ったけど、こうやって後輩の成長した姿を見ると自分のことのように嬉しくなります。師匠もこんな風に私のことを思ってくれていたのかな。
「ソフィーさん?」
「え? なに?」
「い、いえ。エドさんからリビングを使って良いと言われてますので。お借りしますね」
「うん。お構いなく好きに使ってね」
「あとで様子見に来ますね」
「ありがとね」
「それじゃ、わたしは下にいますね」
薬箱を手に立ち上がるサラちゃんは「絶対安静ですからね」と念を押すように私に釘を刺して部屋を出て行きました。たぶんエドから釘を刺しとけでも言われたんだろうね。さすがの私も熱がある状態で夜更かしして医学書を読んだりしないのに。
「よっぽど信用されてないんだろうね」
ベッドの中で苦笑する私は目を瞑り、身体を休めることにします。今日はみんなに迷惑掛けちゃったし早く治さないと。
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