翌日の昼休み。


 迷いなくおろし蕎麦を注文した咲良は、トレイに乗せられたおろし蕎麦を手にして『席取っとくね』とアイコンタクトを取る。


「ちーちゃん、決まった?」

「うーん、10日までって書いてあるから、冷やし中華にしようかな」

「早くしないと食べる時間なくなっちゃうよ?」

「分かってるって」


 ちーちゃんは、ちょっとマイペースで優柔不断なところがある。

 特に食に関しては、すぐに迷子状態。

 自動販売機の前で『神様の言う通り~』と、占い始めることもしばしば。


 彼氏の尚理くんは、そんなちーちゃんのことが放っておけなくて、いつも世話係。

 中学部は一緒だったけれど、ロボット工学を学びたいと、高専へと進学した。


 二人がいつから付き合ってるのかは知らないが、相思相愛で絵に描いたような美男美女だ。


「やっぱり今日はきつねうどんにする!」


 やっと決まったらしい。

 席に着いた頃には、さっちゃんのおろし蕎麦が半分ほどなくなっていた。


「いただきまーす」

「いただきます」


 五目炒飯(スープ付き)にした雫は、レンゲで炒飯を掬った、その時。


「あっ……雫、津田くん来たよ」

「んっ?!」


 雫の肩がビクッと震える。

 さっちゃんの視線の先を辿るように顔を横に向けると、片手を上げた彼がこちらへ颯爽と歩いて来るではないか。


「っちわ」

「ご飯食べて来たの?」

「はい、速攻で食べました」

「お弁当なら持ってくればよかったのに」

「え、一緒に食べてもいいんすか?」

「別にいいよね?」

「……私は大丈夫だけど」


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