冗談なのかな……?

 一応、白紙の用紙だし。


 サインしてと言われても、一つ返事でサインなんてできる代物じゃない。

 そもそも、あなたまだ18歳に達してないよね?

 18歳にならないと婚姻できないと法律で定められている。


 高校生が持ち歩くようなものじゃないし、昨日の今日でこれを出されても……。


「サインってのは冗談だとしても、雫を口説き落としたいのは通じたかな、ね?」


 アイコンタクトを取る、ちとせと咲良。

 何一つアクションを起こせない雫の代わりに、対応してくれている。


 他人のことは言えないが、脳みそまで筋肉なのだろうか?

 そんな風にしか思えない。


 揶揄ってるだとか、弄んでるようには見えない。

 むしろ、本気で言ってるんじゃ?と一瞬思ってしまったほど、おちゃらけた感じは一切しない。


 だけど常識的に考えても、ありえない状況なのには変わりない。


 昼休みが終わりを告げる予鈴が鳴る。

 次々と片付け始める生徒を視界に捉え、咲良が一足先に席を立った。


「うちら、お昼休みはたいていここにいるから、良かったらいつでもおいで」

「さっちゃん!」

「いいじゃない。卒業まで半年しかないし、こういう時間も高校生活には必要だよ?」

「っ……」

「津田くんも一斉テストあるでしょ?早く戻らないと遅刻するよ?」

「あ、はい。放課後は部活があるんで、また明日来ます」

「テストも部活も頑張りな」

「あざっす。先輩方も、テスト頑張って下さい」


 人目も気にせず深々とお辞儀をした彼は、颯爽と北校舎へと戻って行った。


「超絶イケメンなマッチョじゃない!」

「それも、そ~~~と~~~雫のことが好きだね、あれは」

「もうっ、二人とも冗談はやめてよっ」

「「冗談じゃないって!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る