⑥
「スポーツ特進科2年、
「津田くんね」
「空手をしてて、今年のアジア大会で2位。来年のオリンピック強化選手にも選ばれてます」
「おぉぉ~!空手の有望選手なんだね~」
空手……。
だから、こんなにも体が鍛えられてるんだ。
3年前まで、私も銃剣道や体操とかやっていたから分かる。
1日や2日で出来上がる体ではない。
毎日コツコツと鍛錬しなければ、こういう体には出来上がらない。
「雫……?」
「……ん??」
「自己紹介してくれてるんだから、雫もしなきゃ」
「えっ……」
「ここ、座ってもいいっすか?」
「どうぞどうぞ~」
そうだよ~と言わんばかりに、こくこくと頷くちとせ。
昨日のこともあるから、ちゃんと話さなければならないのは分かるけど。
男子に免疫がない雫は、自己紹介するのも至難の業だ。
総合特進コースは、女子クラス、男子クラスと分かれている。
だから、普段から校舎内を行き来する男子を目にしても、会話することがほぼゼロと言っていい。
クラス委員をしているから、委員会の時は話すこともあるけれど。
結局は必要なことを話すだけで、こんな風にプライベートな会話をしたのは、数か月前の合コンが最後?
既に食べ終えている咲良は、トレイの上に置かれているスプーンを手にして、それをマイク代わりに雫に向ける。
観念した雫は控えめに深呼吸して、視線を持ち上げた。
「総合特進コース3年、……香椎 雫です」
入口が騒がしかったのは、彼が登場したからだ。
こんな体躯の生徒、南校舎では見かけないから。
周りのテーブルの子たちの視線が突き刺さる。
合コン?お見合い??みたいな自己紹介のやり取りに、興味津々とばかりに好奇な視線が向けられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます