「スポーツ特進科2年、津田つだ 虎太郎こたろうです」

「津田くんね」

「空手をしてて、今年のアジア大会で2位。来年のオリンピック強化選手にも選ばれてます」

「おぉぉ~!空手の有望選手なんだね~」


 空手……。

 だから、こんなにも体が鍛えられてるんだ。


 3年前まで、私も銃剣道や体操とかやっていたから分かる。

 1日や2日で出来上がる体ではない。

 毎日コツコツと鍛錬しなければ、こういう体には出来上がらない。


「雫……?」

「……ん??」

「自己紹介してくれてるんだから、雫もしなきゃ」

「えっ……」

「ここ、座ってもいいっすか?」

「どうぞどうぞ~」


 そうだよ~と言わんばかりに、こくこくと頷くちとせ。

 昨日のこともあるから、ちゃんと話さなければならないのは分かるけど。

 男子に免疫がない雫は、自己紹介するのも至難の業だ。


 総合特進コースは、女子クラス、男子クラスと分かれている。

 だから、普段から校舎内を行き来する男子を目にしても、会話することがほぼゼロと言っていい。


 クラス委員をしているから、委員会の時は話すこともあるけれど。

 結局は必要なことを話すだけで、こんな風にプライベートな会話をしたのは、数か月前の合コンが最後?


 既に食べ終えている咲良は、トレイの上に置かれているスプーンを手にして、それをマイク代わりに雫に向ける。

 観念した雫は控えめに深呼吸して、視線を持ち上げた。


「総合特進コース3年、……香椎 雫です」


 入口が騒がしかったのは、彼が登場したからだ。

 こんな体躯の生徒、南校舎では見かけないから。


 周りのテーブルの子たちの視線が突き刺さる。

 合コン?お見合い??みたいな自己紹介のやり取りに、興味津々とばかりに好奇な視線が向けられる。

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