⑤
「イケメンマッチョくんは、どんな髪形だったの?…短髪?」
「……ん、短髪だった」
「他に特徴とかは?顔にほくろとか無かったの?」
「……顔には無かったかな」
昨日の出来事を思い返す。
数分間の出来事だったけれど、雫にとっては一瞬の出来事だった気がする。
「身長が190㎝くらい?……私が見上げたくらいだから」
支えられて立った時に、彼の気配がそんな感じだった。
「その彼ってさ、Yシャツのボタンを2つくらい開けてて」
「……あっ、そうそう!」
「眼力がある感じで、見た目は野獣系?」
「……野獣系になるのかな、あんまりよく見てなくて分からないけど、眼力はあった気がする」
スープカップを置き、視線を持ち上げた、その時。
「みーっけ」
目の前に、大柄な男子生徒が現れた。
「雫……?」
「雫が昨日駅で会った人って、……彼?」
「………」
顔ははっきりと憶えてないけれど、鋭い眼と視界を覆うほどの体格と存在感。
それと、少し低めの声音がそっくり同じに聞こえる。
「えええぇっ?!……(何でいるの?!)」
表情からして、同一人物らしい。
昨日も今日も、突然目の前に現れた彼。
完全に思考が停止している雫に、優しく微笑みかけてくる。
「うちの高校の制服着てたから、全クラス片っ端から探したんで」
「………え?」
「ひゃぁ~~っ、雫~モテモテじゃん♪」
「(さっちゃん)…!!」
「えぇ~っと、何くん?名前教えて貰ってもいい?」
「ちょっと、咲良っ」
「いいじゃない、別に。わざわざ雫探しに来たくらいなんだから、名前くらい教わっても」
肝が据わってるというか、行動力がありすぎる咲良。
戸惑っている雫の代わりに、彼に話しかけ始めた。
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