「イケメンマッチョくんは、どんな髪形だったの?…短髪?」

「……ん、短髪だった」

「他に特徴とかは?顔にほくろとか無かったの?」

「……顔には無かったかな」


 昨日の出来事を思い返す。

 数分間の出来事だったけれど、雫にとっては一瞬の出来事だった気がする。


「身長が190㎝くらい?……私が見上げたくらいだから」


 支えられて立った時に、彼の気配がそんな感じだった。


「その彼ってさ、Yシャツのボタンを2つくらい開けてて」

「……あっ、そうそう!」

「眼力がある感じで、見た目は野獣系?」

「……野獣系になるのかな、あんまりよく見てなくて分からないけど、眼力はあった気がする」


 スープカップを置き、視線を持ち上げた、その時。


「みーっけ」


 目の前に、大柄な男子生徒が現れた。


「雫……?」

「雫が昨日駅で会った人って、……彼?」

「………」


 顔ははっきりと憶えてないけれど、鋭い眼と視界を覆うほどの体格と存在感。

 それと、少し低めの声音がそっくり同じに聞こえる。


「えええぇっ?!……(何でいるの?!)」


 表情からして、同一人物らしい。

 昨日も今日も、突然目の前に現れた彼。

 完全に思考が停止している雫に、優しく微笑みかけてくる。


「うちの高校の制服着てたから、全クラス片っ端から探したんで」

「………え?」

「ひゃぁ~~っ、雫~モテモテじゃん♪」

「(さっちゃん)…!!」

「えぇ~っと、何くん?名前教えて貰ってもいい?」

「ちょっと、咲良っ」

「いいじゃない、別に。わざわざ雫探しに来たくらいなんだから、名前くらい教わっても」


 肝が据わってるというか、行動力がありすぎる咲良。

 戸惑っている雫の代わりに、彼に話しかけ始めた。

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