放課後の教室。


「今日、どっか寄って帰る?」

「あ、ごめん。今日、本屋さんの日」

「あっそうか、今日は1日だもんね」

「……うん」

「雫が、イケメン王子と出会えますように~~♪」


 咲良が両手を翳し、雫に念を送る。


「さっちゃん、ありがと」

「じゃあ、また明日ね」

「また明日」

「雫、バイバイ」


 毎月1日発売の月刊コミック。

 これがお目当てなら、近場のコンビニでも手に入る。

 私のお目当ては、その月刊誌を受取りに行った際に、未発掘のイケメン二次元を探し出すこと。

 コミックだけでなく、小説やDVD、ゲームに至るまで、大手の書店内を隈なくチェックするのが楽しみの一つ。


 私の生き甲斐を熟知している親友二人と、駅前の交差点で別れた。


 雫は駅前の交差点を渡り、書店を目指す。


 アスファルトの照り返しもあって、体感温度はかなり高い。

 日陰を求めながら足早に先を急ぐ。


 書店の自動ドアをくぐると、一気に冷気に包まれた。


「涼しい~」


 思わず声が漏れ出すほど。


「いらっしゃいませ」


 陳列するスタッフの後ろを横切り、一目散にお目当てのコーナーへと。


「えっ、コミカライズになるの?!」


 コミックが陳列されている棚に広告のポスターが貼られていて、好きな絵師さんがコミカライズの担当になったことを知る。

 約一年ぶりの作品だ。

 これは、絶対に予約せねば。


 **


 大収穫があった雫はルンルンで書店を後にする。

 何軒もお店をはしごしたお陰で、戦利品を幾つもゲットできたのだ。

 駅へと向かっていると、スマホのアラームが鳴る。


「アルディ様の時間だ」

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