5章 俺の試合、見に来ませんか?

 週明けの月曜の朝。

 親友の二人と駅で合流し、学校へと向かう。


「どうだったの?初デートは」

「電話とメールで報告したじゃない」

「あれだけじゃ、全然分からないよ」

「えっ」

「何か、進展あった?」

「え……?」

「表情が垢抜けた感じ」

「っ……」


 伊達に中高一緒に過ごして来たわけじゃない。

 表情一つで、私の心なんて全部お見通しなのだろう。


 彼と池袋のアニメ専門店に行ったことは、電話とメールで報告済み。

 私が二次元オタクなのも彼は知っていて、彼も同じ趣味だということも伝えたのに。


 私は三次元の男子にモテないがゆえに二次元のイケメンにどハマりだけれど、彼は二次元に恋しているわけじゃない。

 ラーメン屋さんで夕食をとりながら、彼が二次元にハマったきっかけを聞いた。


 女の子の心理を理解したくて見始めたのがきっかけらしいが、意外にも男性である自分にも共通する点が多いことに気づいたと。

 要は、どういう男になったら、好きになった人に夢中になって貰えるのか。

 視点の切り替えというか、発想の転換というか。

 女性向けアプリの盲点に気づいたという。


「ってことは、好きな人がいたってこと?」

「……そうなのかな?そこまでは聞いてない」


 二人にラーメン屋さんでの経緯を説明したら、そんな質問が返って来た。


「まっ、今は雫に惚れてるんだから、問題ないでしょ」

「けど、男の子の初恋って、結構後引くよ?」

「咲良、その口縫い付けるよ?」


 ちーちゃんなりに気を遣ってくれたらしい。

 さっちゃんの唇をぎゅっとつまんでいる。


 別に彼が誰を好きだったとか、初恋がいつだったのかだなんて気にしない。

 むしろ、今まで誰とも付き合ったことがないと言ったことすら、未だに信じられないくらいなのに。


 

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