Once upon a time there was a lady and a knight.
昔々、あるところに天馬の乙女という不思議な力を持った娘がいました。
「娘よ、北の山に住む天馬に会って国を守ってくれるよう頼むのじゃ」
娘は天馬に出会うために身分を隠し、ヒルデの騎士だと偽って旅をすることにしました。
「男の人の格好をすれば、きっと誰にも分からないわ」
しかし、不幸なことに旅に出てすぐ娘は本物のヒルデの騎士に出会ってしまったのです。
精悍な騎士は娘が女であると見抜き、娘にこう頼みました。
「人を探してるんだ。僕のふりをして、一緒に旅をしてくれないか」
でも騙されてはいけません。実は騎士は乙女の命を奪えと命じられている悪い騎士で、娘を乙女と知らずに声をかけてきたのです。
けれどもそんなことを知る由もない娘は、天馬に会いたい一心でその頼みを受け入れてしまいます。
こうして二人の奇妙な旅が始まりました。
旅は至って順調。二人は一緒に馬車に揺られ美しい都につきました。
お互いの素性を知らないままで過ごすうち、騎士に変化が現れました。娘の素直な一面に惹かれた騎士は娘に恋をしてしまったのです。
娘も騎士の心の優しさに惹かれ、二人はとうとう互いの思いを告げました。
「君を愛してる」
「私もあなたを愛してる」
騎士は真珠糸の髪飾りを、娘は太陽の宝石を真心の証として捧げて、二人は晴れて結ばれたのです。
しかし、運命は残酷です。
旅が進むに連れ、二人はお互いの本当の姿を知ってしまったのです。
「まさか、彼女が天馬の乙女だったなんて」
「まさか、彼が私の命を狙っているなんて」
悲しみに暮れる二人はお互いへの恋慕を抱えたまま、離れることも憎むこともできず愛し合ったまま旅を続けました。
「ごめんなさい、もうこれ以上一緒にいることはできないの」
幸せな時間はあっという間です。旅の終わり、二人は自身の本当の姿を明かし、別れのキスを交わしました。
時は満月が隠れる夜、娘はいよいよ天馬に会いに行きました。
しかし娘の命を狙う悪者に邪魔をされてしまいます。
「天馬になど会わせん、わしがお前を殺してやる!」
絶体絶命の状況、もうだめかと思ったそのとき。心を入れ替えた騎士が娘を助けにきました。
「僕が来たからにはもう大丈夫だ」
男を倒し、娘を助けた騎士は娘に真実の愛を告げ、その真心に誓いのキスをしました。
その瞬間、天から美しい薔薇の女神が現れて二人に幸福の祝福を授けました。
「あなたたちの真実の愛、しかと認めましたよ」
天からの祝福を受けた二人は真実の愛のキスを交わし、ようやく心の底から結ばれたのです。
「これからはずっと一緒だ」
そして二人はいつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
(教科書掲載、王都出版社『薔薇の女神の伝承』第一部「天馬の乙女と騎士」より)
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