17話.エピローグ

 ここはクラン明星が所有する施設の中。


 集まるは、前回の作戦に参加した全てのクランメンバー。


「結局、55億円しかもらえなかったの」

「それすらも私たちが倒したわけではないだろう」


 作戦の後日、ケアの生存確認のために探索をしたがその存在は確認できなかった。


 それを世間に公開した所、なぜかクラン明星が倒したという判定になり懸賞金が送られてきた。


「そもそも俺と月城はケアに会ってすらないだろ」

「そうなんだ。だから私たちは何も知らないし言えない」


 見てすらもないから記者に「どんな怪物でしたか?」なんて聞かれても困るだけなのだ。


 あの時は「ま、まぁとんでんないやつです。言葉にするのすら恐ろしい」と言って誤魔化したが次に聞かれると怪しい。


「だから東雲、いや東雲先生教えてください。どんな化け物でしたか?」

「え?アイリ?アイリが教えるの?」

 

 お前以外見たやついねぇだろ。


「アイリ言った気がするの」

「お前が言ってたのは55億円がどうとか60億円もいたとか65億円に逃げられたとか、意味わからないんだよ私と神宮寺にはな!」


 俺と神宮寺が他のメンバーに助けられてすぐに退避した。

 だが東雲は偶然に特級ポーションを発見し、回復して1人勝手に下層へ向かった。


 傷だらけでグタグタになって帰ってきた時はメンバー全員がめちゃくちゃ心配したというのに口を開けば65億だの60億だのしか発しない。


 どんなやつだったのか聞いても「そこまでだった。それより65億円」と答える。


 結局ケアは倒したのか?と聞くと「知らない、逃げられたの……65億円にも60億円にも55億円にも!!」といって怒りだす始末。


「んーと、ケアは頭だけのイカついおっさんだったの」

「頭だけのおっさんか」

 

 そりゃまた、なんかのホラー映画か?


「能力は使役系、ストレンジを使役してたの」

「それはなんとなく二つ名から予想できてたな」


 "魔獣師"なんて二つ名がついてるからストレンジをどうにかする能力だとは分かる。


「でも本体は弱いの、多分オーガより雑魚なの」

「自分は戦わなくて、周りに戦わせる奴のテンプレだな」


 周りを強いやつで固めて、自分は弱いなんて何度も創作の話で見た。


「アイリが行った時は65億円と60億円が味方同士、55億円が1人ぼっちだったの」

「……そもそも60億円ってどいつだよ」


 60億円60億円って、私たちはそんなストレンジを見ていないぞ。


「確か呪妖?のダンジョンボス」

「はぁ!?そんなやつもいたのかよ!!お前よく生きて帰ってこれたな!?」


 呪妖のダンジョンボス、"呪絶"カース。


 聞いている情報では超強力な持続ダメージを展開する範囲系の能力を持っており、遠距離攻撃手段を持っていない限りまず戦うなとのこと。


「でもアイリ、多分助けられたの」

「助け……は?誰に?」


「おっきいスライムが出てきて攻撃くらったの」

「おっきいスライム?」


 その時点で分からん。異常個体か?


「で、その後55億円にストレンジをいっぱいけしかけられたの」

「55億……ケアか」


 60億だの65億だの55億だの紛らわしいわ!


「それで危なかったけど、60億と65億円が代わりに倒してくれたの」

「ほう、つまり助けてくれたと解釈したわけだ」


 個人的には助けられたなんて絶対にないと思うがな、その前に私たちボコボコにされてるわけだし。


 それより問題は、


「普通、深淵にいるはずの黒天王ネグロキングが深森に現れてしかもまたしてもいるはずのない呪絶と手を組んでいたというのはまずい」


 その後忽然と姿を消したというのもまずい。


 自我持ちストレンジがダンジョンから出てきて別のダンジョンに入った可能性もあるし、ダンジョン間での移動もできる可能性がある。


 もとよりダンジョン同士での食い合いは謎が多すぎる。


「何より黒天王ネグロキング、あいつ強すぎるだろ」

「だから言っただろ」


 こっちが実力を試すつもりでかかっていったが、結局何もできなかった。


 あいつからしたら私なんてただの雑魚同然なのだろう。


「でも東雲は一瞬いい勝負してたよな」

「ううん、できてないの。あれは試されてたの、本気なら一撃で死んでた」


 このクランの最強戦力である東雲も一撃か。

 やはり自我持ちの中じゃ別格も別格、神宮寺の言う通りこれ以上触れないのが得策だろう。


「でも65億!次は倒すの!」

「やめとけって、次はまじで死ぬぞ?」


 今回はなぜか殺されなかった。

 次は確実に殺されるという確信がある。


「でもアイリだけじゃ勝てないから、2人も来て欲しいの」

「やだよ、1人で行け」

「私はもうあいつの実力が分かったからいいかな」


 他のクランメンバーも二度とあんな化け物を見たくないという表情をしている。


 戦ってはいないらしいが、近くから見ているだけでもかなり精神にくるレベルの化け物だったらしい。


「じゃあ、また今度にするの」

「今度のやつも1人で行けよ」


 別に今行きたくないとかじゃないから。

 ずっと会いたくないから。


「はぁ……で、このこと公開すんの?」

「これは公開しないと世間から物凄い反感を買うだろう、仕方ないことだ」


 本来いないダンジョンでの自我持ちの確認は流石に秘匿するわけにはいかない。


「そもそもなぜ今動き出したのか、それになぜ私たちは生かされたのか、分からんことが多い」

 

「次の依頼は平和なやつがいいな」

「ダンジョン関係で平和な依頼か……だといいな」


 大きく、危険な依頼を終えたクラン明星はまだ見ぬ次の依頼に希望を持つのだった。

  


☆☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆☆


これにて二章完結です。


 

 面白い、続きが気になる、アンノくんがかっこいいと思った方はフォローや星、ハート、コメントを是非よろしくお願いします!


 



 

 

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