20話.嵐は過ぎ去った
sideアンノ
「なあ、お前ってそんな強かったんだな」
「んん?ま、まあな」
いつもどおり4人は集まっている。一応、忍野勇斗というこのダンジョンに吹き荒れた旋風は去ってくれたわけで。
「かっこよかったよ?アンノ君」
「ポイジェそればっかやな、褒めても何もないぞ?」
ポイジェを助けてからこいつしょっちゅう言ってくる。やめてほしいんだよこれ、なんか恥ずい。
「照れてるのバレバレですよアンノさん」
「はあ?照れてないし、なんで照れるんよ。普通のことしただけやろ」
俺としては家族同然、それもその中でも一番暇な時間一緒にいるポイジェがやられかけてたから助けただけで別にさ、ほら普通じゃん。
「でもホントにありがとね?来てくれて……私来てくれないかと思っちゃったもん」
「それはポイジェが悪いんやん。思念送るだけなのに焦ってその場で叫びまくるとか……」
こいつからの思念が遅かったのは、こいつが焦って思念を遅れてなかったのが原因だ。しかも俺からの返事がない=無視=見捨てられたって勘違いして泣きわめいたせいで醜態晒してるし。
「焦ってたから仕方ないじゃん、でも見てたのなら来てくれてもよかったんじゃない?」
「いや、もしかしたら作戦かもって思って」
「いやいや、こいつに限ってそれはないだろ」
「やっぱそうだよな」
ほとんど策考えずに最強探索者に特攻とか、無鉄砲にもほどがあるだろ。
「今回に関してはまじで俺いなかったらポイジェやばかったから、もうちょっと注意してよ」
「うん……でも次も助けてくれるでしょ?」
次ってまたあいつに喧嘩売るのか?もうやめとけよ
「忍野勇斗は駄目」
「ええ〜なんでよ!」
「あのな、実際にやってみて分かったけどあいつヤバい。次もしかしたら1度殺される可能性だって0じゃない。そうなったら助けられんだろ」
「なんか余裕そうに見えたけど?」
あのときは結構意識してそう振舞ってたからな。
「あれはポイジェが怖がらんようにするためやん。実際思いの外強くて焦ったけど、それ丸出しにしたらポイジェが怖がるかな〜って思ってしたんやぞ?」
「ふ、ふーん……ありがと」
「そもそも俺真剣に戦ってる時無口になる癖あるからな、結構そっちに意識割いて戦うのキツかった」
出てった瞬間泣きながら抱きついてきたらそりゃあ心配するし気も遣うだろ。
「で、なんでお前一人で行った?」
「それはその……」
そもそもなんで一人で行ったんだよ、そんで行くなら一言いってや。
「あのまま忍野勇斗を放置してたらダンジョンが壊されそうだったのと、アンノ君に一度……う…て…言われたかったの」
「な、なんって?聞こえんだ」
放置してたら俺らのこと探し回って壁とか壊しまくってそうなのは理解できるけど、二個目なんて言った?
いやいやいや、お前ら二人ともそんな顔で見られても。聞こえんのは聞こえんって
「言ってやったらどうなんだ?」
「何をやねん?」
言われたかったのは聞き取れたけど肝心な"何を"の部分が聞き取れんかったわ。
「いや、いいよ。結局何もできてないし、なんなら迷惑かけちゃったし」
「そっか、じゃあいいや」
「話変わるけど例のダンジョンのことは分かってないの?」
「少し、それっぽい情報があった」
例のダンジョンとは、忍野勇斗が入り浸っていたというダンジョンである。
弥生菜奈が吐かなかったせいでこちとら探すのに手間かけてんじゃ、全くあの調子でポロッと言ってくれれば良かったのに。
「んでその情報って?」
「他のダンジョンの奴が言ってたんだけどな、どうにも俺たちが知らない自我持ちがいるらしいんだよ」
つまり隠してたってわけか。そりゃ怪しいな。
「そのダンジョンに行くの?」
「まだ決めてない、これから決めるつもりだ」
なんせ未知の自我持ち、警戒は必要って感じか。
「まぁそっちはそっちで任せた」
ダンジョン間の細かい話はめんどくさい、俺の正確にあってないからそういうのは向いてるデイノに任せる。
「あと話変わるけど、懸賞金ってなに」
「私とデイノが60億円でアンノが65億円って決まったね、そういえば」
新たに人間側が決めた懸賞金システム。結構ガタガタなんだよな。
一概にどっちが強いとか決められないし、不死身か違うかでも変化しそうだし。
その上で考えた結果、
「今んとこ懸賞金の基準は対峙した時の被害レベルって考えてる」
「確かに、それならポイジェは被害でかいからな。俺と一緒になるのも分かる」
いや、お前のことはほとんど人間側が知らないから適当に付けただけだろ。
「しかも何じゃ危険度Sランクダンジョン"深淵"って」
「いいじゃん、私好きだよ?かっこいいし」
まぁかっこはいいけどさ。
「懸賞金もあるし、俺たちのとこ討伐しようと探索者が来るぞ?それも強いのが」
今までは初心者ダンジョンだったから弱い人間しか来なかったがこれからは強い探索者がパーティ組んで俺たちを討伐することを目標にこのダンジョンに潜ってくるだろう。
「で、でもまたアンノ君が助けてくれるし……そもそも負けないし!」
「よく言うよ、1人で行って泣いてたくせに」
「い、いや仕方ないじゃん!それは……も、もういい!この後アンノ君の所に暇つぶしに行くから!ほら、伝えたからね!」
「あーおっけ。待っとく」
ポイジェはプンプンしながら出て行った。
「あれ?ポイジェさんとアンノさんいつからそんないい感じなんですか?」
「いや昔からだろ、あいつが絡んでくるから俺も絡んでるんよ。俺とポイジェが仲良いのは知ってるだろ」
全く、今更なんの質問じゃ。
☆☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆☆
ここまで読んで頂きありがとうございます。これにて一章完結です。
面白い、続きが気になると思った方、星やフォロー、高評価とハートよろしくお願い致します。
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