ダンジョンの深淵に住む「魔物」的な立場の俺、配信で晒されて見事にバズってしまう
サワーボール
一章:最強探索者と最強ストレンジ
1話.プロローグ
side???
広けた空、豊かな自然、鳥のさえずる声。
これだけ聞くと、平和を感じるかもしれない。
だがどこからか聞こえるおぞましい咆哮。そして俊敏に動く一つの影。
明らかに現実とは思えない怪物と、人間が戦っている。
体長10メートルはあるであろうその巨体を意外にも素早く動かす。そして人間はそれ以上に速く動き、怪物の猛攻を軽くいなしている。
「お前、やっぱりこの層じゃ最強だな」
人間の男は言う。まるでこの怪物と何回も会ったかのように。
「一撃喰らえば即死とは行かずともかなりダメージを負う」
男は続ける。
「お前との戦いは一番、緊張する。だからいい。この緊張感を忘れるわけにはいかない」
もう、常人には理解できないだろう。この男の発言が。
「他の奴らは弱すぎて飽きた。まだ探索者の資格とって1年だけど、俺って多分強いよな、うん」
話しながらも、怪物の攻撃を軽くいなす。
「じゃあそろそろ、倒させてもらいますか」
怪物の攻撃を避け、懐に入り込む。すると、怪物は分かっていたかのように体中から棘を無数に生やす。
男を串刺しにするためだ。
「んなこと分かってるよ!」
だが男は後ろに一歩下がることで皮一枚で躱す。やはり知っていないとできない動き、この男は何度もこの怪物と戦い、勝っているのだろう。
そして、棘がしまわれる。
―――その瞬間、男の手先がブレる。
「っよし。これでオッケーだな」
怪物の体が上下左右、あらゆる方向から斬り刻まれ、塵になる。
「こいつ常時くっそ硬いけど針閉まったあとだけ柔らかいんだよな」
この男が今軽く倒した怪物、世間ではかなり危険とされ、Sランクの探索者になってギリギリ一人で討伐が可能になる強さであり、普通はパーティで戦う相手である。
もちろんSランクの中には軽く倒すものもいるが、それは所謂異端者だ。
この男が異端者なのか、戦った怪物がたまたま雑魚で今回は苦労しなかったのか。間違いなくこの男が異端者なのであろう。
「とにかく、もうここのダンジョンには用はないかな。全部倒したし。次どこ行こっかな〜」
今、現代に一体の異端者が放たれた。
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side主人公
えー、俺の名前は……まぁ、アンノって言われてます。
本当の名前じゃありません。本当の名前は何百年か前に忘れました。
でもそれじゃ都合が悪いからって友人たちに「unknown」から取って「アンノ」って付けられました。
最初は安直な名前だなぁ、とか思ってたけどみんなも結構安直な名前だし月日が経てば意外といい名前って思うようになった。
ちなみに今俺は何をしているのか。今俺は自分の区分に湧いてくる羽虫どもを適当に処理している最中だ。
俺は一応このダンジョンのラスボス、とは行かずともかなり上位の存在となっている。
だからこうして俺専用のエリアみたいなのが与えられてる。
そのエリアは自分の好きなように変えられるから俺以外の連中、みんなバラバラだ。
でもこれだけは変えられない。
無制限で羽虫どもが湧いてくるのだ。どいつもこいつもドラゴンみたいな見た目してる癖に実際は雑魚。
普通は羽虫なんて気にしないが、あまりに多すぎると流石に腹が立つ。
ということで絶賛駆除中なのだ。
駆除のやり方は単純明快、圧倒的な力で正面から叩き潰しまくる。
例えばそう。こうして。
俺の全身から魔力が溢れ出し、指先に集中する。
その魔力は変化していき、人間の言葉で言うとそうだな、つけ爪のようなものか。
まぁめちゃくちゃドス黒い色だが。
そしてその指を羽虫どもに向け、ちょいと横に振ってやる。
するとどうだろう、あら不思議。羽虫どもが上下に断ち斬れました。
そのまま他の羽虫にも指を向け、縦や横に振る。
「はぁ、これでもめんどくさいわ。ちょっと出力あげるか」
出力を少し上げる。その間一瞬の隙ができるが、この羽虫どもは俺になにも攻撃してこない。
いや、攻撃なんてできないのだ。俺の能力が働いている限り。
「はい、これで終わりや」
限界まで圧縮した魔力を指先に集め、今度は地面に向ける。
すると、凄まじい破壊音とともに地面ごと羽虫どもがスリ潰れた。
「やっと終わった。こいつら腹立つねん、俺の家荒らしやがって。○ね!一生出てくんなこのハゲ」
一応死体に威嚇しておき、帰るとするか。
……あーあいつまた勝手に来やがった。
「ねぇねぇ!アンノ君!めっちゃ暴れてたけど何かあったの?」
「いや、羽虫どもがうるさかったから消しただけや」
まぁ暇だったから別にいいんだけどね、来てくれても。
「ただお前一応連絡してや」
「ええー、別にいいじゃん。どうせ変わんないでしょ」
確かにこいつから連絡来ても来た瞬間にもうこのエリア入ってきてやがるからほぼ変わらんけどさ。
あ、ちなみに連絡ってのはなんか、脳内電波みたいな。なんて言うかテレパシーみたいな感じでビビって来る。
「一応心の準備があるねん、最初の頃はまじでビビりまくってたからな?お前みたいなデッカいのが入ってきたら」
「デッカいって失礼すぎない?もうちょっとレディに気を遣ってもらっていいかしら?」
出たよ、何がレディだ。お前性別ないだろ。
ビビるもんはビビるんだよ。今はもうこいつの魔力なんとなく分かってるから入ってきたとしても「あーなんかまたあいつ来たな」ぐらいしか思わないけど最初のころやばかったからな?
「はいはい、レディレディ。とにかく連絡はしてくれ」
「ええー、めんどくさい」
まぁ確かに。ちょっとテレパシー送るだけ、ただそれだけがめんどくさいのはよく分かる。
「てか、なんで俺なの?他のやついるやん」
「え、それは……言わせちゃうの?」
いやだからお前性別ないだろ、て。
「この件何回するんですか。えー、でもそんなに俺といて楽しい?」
「ま、まぁそれなりに。1人でいる時よりはずっと」
ほーん、そうなのかねぇ。俺も1人でいるよりは全然楽しいからいいけど。
「んで、何するん?」
「今日はちょっと手伝ってほしいことがあってさ、それで来たの」
「え何?」
「えっと、ちょっと毒浴びて欲しくて」
「はぁ?いや無理無理、痛いの嫌だから帰ってもろて」
はぁ。毒浴びるとか絶対嫌。とにかくそんなことなら帰ってくれ。
帰らないなら別のことして暇潰すけど。
でもなんか慣れたな、この日常。
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