22話 後日談
「ってことがあってよー災難だったぜほんと」
「アハハ。相変わらずおもしろいね拓実の家は」
俺は昨日我が家で起こった珍事件を、修にオブラートに包みながらも偽りなく語った。
あの後、母さんから事情聴取を受け、俺と
今朝、雫にお礼を言うと久し振りにたくさん話せてよかったと逆にお礼を言われてしまった。本当によくできたやつだ。
姉妹の間にできた溝について俺は少し心配していたが、双子ってやっぱりすごいな、一日経てばすっかり仲は元に戻っていて安堵というかなんなら拍子抜けした。
で、そんなことを俺が胸の中に収めていられるはずもなく、こうして登校して早々、修に喋っているわけだ。ちなみに俺と修が溜まっている教室前方の窓際には、実はもう一人居合わせているのだが、さっきから一言も声を発しない。
「おい、雄牙。どうした元気ないな」
「昨日の威勢はどうしたの?」
「…………」
昨日、俺たちのあらぬ噂を学校中に広めた張本人――結賀雄牙は朝から元気がないようだ。皮肉めいた修の言葉にも一切反応を見せない。いつもなら突っかかってくるだろうにおかしいな。
「いや、だって胸とかそんな話されても……」
「お前は小学生かよ……」
小学生三年の頃、雄牙が「おっぱい」って言った言ってないでクラス中が大騒ぎになるという今となってはアホらしい事件が起こったことを思い出す。あの頃から変わらずコイツの中では「バルス」並みの禁句なんだろう。
「やあみんなおはよ! 何の話してるの?」
「おう、セイ……
危ない危ない。人目に付くところでセインはまずい。
「えーなんで? 修君教えてよー」
「俺の口からは言えないな。雄牙に聞いたら教えてくれるかも」
「ほんと? 雄牙君教えてくれるの?」
意地悪な奴だ。一般男性でさえ麗しい見た目から繰り出される「上目遣い」は効果抜群だというのにそれを雄牙にやってしまうと、
「あ、ああ明日とんかつ定食の発売日だからようく洗濯してから投げるようにね! 着色料一切使ってないから!」
茹でダコのように真っ赤になった雄牙はパニクった末、頭の中がひっちゃかめっちゃかになったようで意味の分からないことを言い出した。
「あはは、雄牙くんっておもしろいね!」
セインのツボが浅いのに救われたな雄牙。普通は変人認定されるところだぞ。
淀みなく照りつける太陽に匹敵する笑顔はとても眩しかった。
だが、ふと思い出す。セインは俺に会いに来る為、この世界に王女という自分の地位を顧みずにやってきたのだと。
昇れば必ず沈みゆく太陽のようにセインもやがてこの世界から去らなければなる日が来るだろう。
そう思うとこの澄み切った空に照る太陽のような笑みを俺は目に焼き付けずにはいられなかった。
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