7話 感動の再会と経緯

「タクミどうしたの? そんなに慌てて」


 周りの目をはばからず引っ付くセインをやっとの思いで引き剥がすと、教室の外へとセインを連れ出した。ホームルーム中だったがそんなの今は関係ねえ。


「どうしたってこっちのセリフだよ! なんでセインがここにいるんだ? それにエマも」

「あ、ダメだよタクミ。こっちではひじりって名前なの」

「んなことどうでもよくてだな、」

「……どうでもいいってひどいよタクミ。せっかくまた会えたのに……」

「いや、その名前のことな。セイン自体じゃなくて……」

 

 ええ……女の子ってズルくね。俺いけなくなくね。なんで涙ぐんでんのよ? 


「うわー転校生泣かしてるよこの人さいてー」

「エマ、お前も何でいるんだよ……」


 俺を煽る声の主はセインに寄り添い頭を撫でて慰める。

さっきのセインの行動だけでもクラスの垣根を越えて早々に学校中に知れ渡るだろうに、こんなところまで見られてしまったら、ただでさえ少ない学校での居場所がなくなってしまう。


「安心してよ、時間停止魔法使ってるからさ」

「ああ、ならいいけど」

 

 俺の気持ちを察してくれたのか、エマはセインを慰めながらそう言った。

 

 あたりを見ると確かに羽ばたく雀も、蛇口から滴る水滴も動きが止まっている。

 

 時間停止魔法は術者以外の者の時を止めることが出来る高難易度の魔法だが、魔力を有する者には効果を発揮しないのが弱点だ。

 だからセインは尚も情けない声を上げ涙をこらえているし俺も……俺も? 


「おい、エマ。俺はなんで動けるんだ?」

「そりゃあまだ魔力が残っているからだよ。誰もこっちの世界に戻ったからって魔力を失うなんて言ってないでしょ」

「いやそりゃ言ってないけどさ」


 鎧とかは消えんのに魔力はまんまなのかよ……。


「まあ細かいことは私もよく把握してないんだけどねー」

「それまずいんじゃないか?」


 こんなに適当でいいのか? 曲がりなりにも一応元勇者だぞ俺。じゃあ勉強ができるようになってたりしたのも関係あったりするのか。


「ていうかなんでここにいるんだよ! 説明しろよ!」

「もう、相変わらずせっかちだなータクミは。感動の再会だよ? 余韻に浸ろうよ余韻に」


 やれやれと困った表情のエマの傍では、ようやく落ち着いたセインが「そうだそうだ」と拳を軽く突き上げ賛同している。かわいいけど。


「…………」

「ああ、もうそんな睨まないでよわかったわかった」

「タクミ、怖いよ。この数か月でなにがあったの……」


 言い返すことをやめ、ただただ睨みを利かせる俺を見かねようやく話す気になったらしい。


「私がね、タクミに会いたいっていったの。そしたらエマがじゃあ行こうって。それで来たの」

「……は?」


 聞き間違いか? そんな軽いノリで異世界に転移できるはずないもんな。よし、明日は耳鼻科にいこう。


「『は?』じゃないよ聞こえなかったのタクミ。私が転移魔法でセインと一緒に来たんだよ」

「すまん耳がどうも悪くて。紙に書いてくれないか」

「あーもーめんどくさいなー」


 俺は持っていたメモ帳とペンをエマに差し出す。

エマは渋々とこっちにきた経緯を書いてくれたが書き間違いなのか「セインがせがんだから」と書かれている。


「……お前、こっちの文字どこで覚えたんだ? もっかい教えて貰いなさい。間違ってるから」

「失礼だなー合ってるよ。それかタクミの目が悪いんだよ」

「なるほどそれだ。明日は眼科に耳鼻科。ハードスケジュールだぜ」

「よし、じゃあ話はこれで終わり。じゃあそろそろ疲れてきたから魔法解くよ」

「お、おうわかった」


 話は全く終わってない気もするがこれ以上話しても意味がないことだけわかった。

 三人して元居た位置に戻りエマが指をパチンと鳴らした。

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